カテゴリー: 環境

  • Setting the Table 2025年9月18日

    経済産業省 CCS事業

    <CCSとは>

    Carbon Dioxide Capture and Storage
    排出されたCO2を集めて地中に貯蓄する技術です。

    <CCS事業とは>

    地下約1,000〜3,000mほどにある貯蓄層まで井戸を掘り、
    地中の圧力・温度を活用してCO2の体積を約300m分の1まで
    圧縮して貯留します。

    貯留されたCO2は
    地下構造や砂岩層の隙間に閉じ込まれます。
    地層水への溶解や
    鉱物化などにより、
    地下貯留の経過時間が長くなればなる程、
    貯蓄は安定化に向かいます。

    <事業化に向けた課題>

    CO2を集めて地中に貯留するというCCSを事業化するには
    技術の確立、コスト低減、ビジネスモデルの構築
    といった経済性が必要です。

    また、貯蓄に適した場所の選定
    事業に対する社会の理解など
    社会的な環境整備が必要です。

    <世界の動き>

    2023年12月に公表されたCOP 28合意文書で
    脱炭素化の方策として明記されています。

    イギリス、EU、アメリカでは2008年から2009年ころにかけて
    CCS事業法が整備され、
    貯留層を利用する権利や事業者の責任範囲などが
    定められました。

    <日本での事業ポテンシャル>

    日本のCO2年間排出量10.4億トンに対し、
    近海の有望11地点で
    合計160億トンの貯留ポテンシャルがあると
    推定されています。

    <CCS事業法>

    2024年5月に
    二酸化炭素の貯留事業に関する法律
    が成立し

    • 試掘・貯留時の安全・適正管理
    • 輸送時の安全・適正管理

    が定められています。

    <許認可>

    海域における特定区域の指定や
    貯留事業の許可には
    環境大臣の同意が必要となります。

    CO2の注入を停止した後に行う
    モニタリング業務などに
    必要な資金を確保するため、
    資金確保も義務付けられています。

    貯留事業者には、
    独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
    への拠出金の納付が
    義務付けられています。

    事業者には、
    安全確保のための技術基準への適合や
    工事計画の届出、保安規程の策定など
    が求めらています。

    事業の公平性のために、
    正当な理由なくCO2排出者からの貯留依頼を拒むことや、
    特定のCO2排出者を差別的に扱うことを禁じ、
    料金などの届出義務も課されています。

    <特定区域の指定>

    北海道苫小牧市沖が
    2025年2月21日に特定区域として
    指定されました。

    千葉県九十九里沖の一部区域が
    2025年9月17日に特定区域として
    指定されました。

    北海道苫小牧市沖は、
    2025年9月17日に
    試掘の許可がなされています。

    <所感>

    CCS事業はCO2を長距離輸送します。
    高圧ガスを長距離輸送する技術に類似しており、
    日本で構築された技術や産業保安規制の仕組みを
    応用することができます。

    一方で、高圧ガスとCO2は比重含めて
    物質が異なるため、新しい技術の確立も
    必要となります。

    CCS事業に従事できる規模、ノウハウ、実績を
    もった企業は限られていると思いますが、
    部材の調達や環境影響性評価等で、
    幅広い企業の参入を受け入れ、
    裾野の広い事業となることを期待します。