2025年3月に経済産業省と環境省より「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について」という文書・参考資料が公表されています。
当該資料によると
「現行法では廃棄する太陽光パネルに対してリサイクルは義務付けられておらず、廃棄物処理法に則って適正処理されることになっている。」
「但し、循環型社会形成推進基本法に基づき、①発生抑制(リデュース)、②再利用(リユース)、③再生利用(リサイクル)、④熱回収、⑤埋立処分の優先順に沿った対応が必要である」
「発電事業実施後の適正な廃棄・リサイクルに対する地域の懸念が高まっている」
「廃棄された太陽光発電設備が事業実施後に不適切に管理又は放置された場合、ガラス面の破損等の状況によっては、感電や飛散、含有物質の流出等が発生する可能性がある」
「バックシートに含有されている銀や銅は精錬により抽出することが可能である。またプラスチックは熱回収される」
「重量の約6割を占めるガラスのリサイクルや、プラスチック・シリコンのマテリアルリサイクルの促進が課題」
などとあります。
今後廃棄物処理法だけでなく、再資源化を義務付けられる、太陽光発電設備のリサイクルに関する何かしらの新たな制度が設けられることが想定されます。
太陽光パネルの耐用年数は一般的に20年から30年程度と言われており、2012年のFIT制度をきっかけに太陽光発電が急速に普及したので、2030年代には太陽光パネルの廃棄が大量に発生することが見込まれています。
そのため、太陽光パネルのリサイクルは新たな事業チャンスと言えます。もちろん新しい技術開発を伴うベンチャー企業の活躍も期待できますが、産業廃棄物処理業にとっては、既存事業にとっての課題となり、もしその課題を乗り越えることができれば次の成長につながることになります。
現状、太陽光パネルリサイクルの義務化について、いつ頃、どのような内容で定められるかという情報はないので、注視しつづける必要があります。
ただし、2025年2月に施行された「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」は、「この法律は、効率的な再資源化の実施、再資源化の生産性の向上等による温室効果ガスの 排出の量の削減の効果が高い資源循環の促進を図るため、再資源化のための廃棄物の収 集、運搬又は処分の事業の過程の高度化を促進するための措置等を講ずることにより、環境の 保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とすること」としており、太陽光パネルのリサイクル体制を準備するにあたって参考になると思います。
この再資源化事業高度化法では、環境大臣が基本方針を示し、判断基準の策定・公表、処分量の多い産業廃棄物処分業者の再資源化の実施状況の報告・公表を通じて再資源化を促進し、再資源化事業等の高度化に係る国が一括して認定を行う制度を創設し、生活環境の保全に支障がないよう措置を講じさせた上で、廃棄物処理法の廃棄物処分業の許可等の各種許可の手続の特例を設けることで、高度化の促進をするとしています。
具体的には、環境大臣の認定を受けた者は、当該認定を受けた再資源化工程高度化計画に従って行う設備の導入については、廃棄物処理法の許可を受けたものとみなすもの、となっています。
太陽光パネルの廃棄はすでに現実問題として発生しており、産業廃棄物処理事業者は既存の法律に基づいて廃棄をしています。太陽光パネルのリサイクルが義務付けられた際には、その内容に従った対応をしなければならなくなります。
産業廃棄物処理業者による、再資源化事業高度化法に対応している事業者は、太陽光パネルリサイクルに関する明確な指針や基準が定められた際に迅速に対応することができのではないかと思います。