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  • 認知症と新オレンジプラン

     認知症には四大認知症と呼ばれるアルツハイマー型、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉型認知症をはじめ、アルコール性、混合型などいくつかの種類があり、その原因も症状もそれぞれ異なっています。

    原因によって、治ると言われている認知症と、今の時点では一度発症すると治らないと言われている認知症があり、例えば、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などが原因で発症する認知症は治る可能性もあると言われています。

    ただし、認知症は一度発症すると元の状態に完全に戻ることは極めて難しいと言われており、認知症を抱えながら生活することは、本人だけでなく支える家族への負担も大きいです。 

    出来るだけ認知症を早期に発見すること、認知症の発症を未然に防ぐこと、専門医とかかりつけ医の連携により認知症を的確に診断できる体制を地域で整えること、認知症の治療を実現するための研究開発を推進すること、住まい・予防・医療・介護・生活支援を踏まえた地域包括ケアシステムの構築によりたとえ認知症になったとしても安心して生活できる社会を実現すること等が、社会的に重要なテーマとなっています。 

    認知症が発症する前の、認知機能の低下がみられるが認知症とされるほどではなく、日常生活に困難をきたす程度でもない状態を、軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)といい、この段階で適切な対策をとることで認知症の発症を防ぐことや遅らせることができると言われています。

    MCIの人は認知症の方と同数程度いるといわれておりMCIの人が認知症に発症するかどうかで将来の認知症患者数が大きく左右されることから、近年MCIが特に注目されています。その一方で、MCIの症状は認知症のように顕著ではないため見過ごされることが多く、MCIの段階でいかに早期に予兆に気づくかということ課題となっています。  

    弘前大学が弘前市岩木地区で2005年から実施している「岩木健康増進プロジェクト」、九州大学が福岡県糟屋郡久山町で行っている久山町研究などで疫学的なデータが蓄積されていけます、将来的には生活習慣病の検査予防によって結果として認知症発症のリスクを低下させるといった形での、予防の推進が可能になっていくことも期待されています。認知症の中で最も割合が高いと言われているアルツハイマー病は、一度発症すると現時点では元の状態には戻らないと言われている難病である一方で、アルツハイマー病は、認知症の中で検査や治療の蓄積において最も進んでいると言われています。

    ただこれらの研究にはまだまだ時間がかかります。厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」では『認知症とMCIの有病率の合計値は約28%(2022年時点)であり、「誰もが認知症になり得る」という認識のもと、認知症になっても生きがいや希望を持って暮らすことができるよう、認知症バリアフリーの推進、社会参加機会の確保等、認知症基本法に掲げる理念・施策の推進に取り組んで いくことが重要。』としています。

    そういった中で、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続け ることができる社会の実現を目指す「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が2015年に策定(その後2017年改定)されました。

    新オレンジプランは以下の7つの柱からなっています。

    • 認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
    • 認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
    • 若年性認知症施策の強化
    • 認知症の人の介護者への支援 
    • 認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
    • 認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
    • 認知症の人やその家族の視点の重視

    その上で、関係省庁の連携はもとより、行政だけでなく民間セクターや地域住民自らなど、様々な主体がそれぞれの役割を果たしていくことが求められること、認知症高齢者等にやさしい地域は、決して認知症の人だけにやさしい地域ではないこと、認知症高齢者等にやさしい地域づくりを通じ、地域を再生するという視点も重要、などとされています。

    地域包括ケアを中心とした地域での活動がますます重要になっており、地域包括センター等と連携して、住民がこの課題を意識して、それぞれの役割を果たしていく必要があると思います。