海外の代理店と契約する際、代理店側から「独占販売代理権」を要求されることがあります。
代理店にとっては、もし自社以外にもその国に代理店があれば、同じ市場で同じ製品でその代理店と競争をしなければならなくなる可能性があるので、むしろこの「独占販売代理権」を要求してくるのが普通であると思います。
一方で、代理店を認定する側からすれば、後からもっと販売力のある代理店が見つかる可能性があるので「独占」という形で販売代理権を与えて、将来の選択肢をなくしてしまうことには抵抗があります。「独占販売代理権」を与えたにも関わらず、その代理店が真剣に販売促進を行わない場合は、市場開拓の機会を失ってしまうというリスクがあります。
グローバルに知名度のあるブランドではなく、これから海外に本格的に展開しようという場合、現地で顧客を保有している代理店候補に対して、優位に交渉を進めることは難しいです。力関係から、代理店側の要望を受け入れざるを得ないことが多いと思います。
そこで、この「独占販売代理権」の考え方を、「排他的独占」と「独占」に分けて交渉するという方法があります。「排他的独占」とは、テリトリー内でその販売代理店以外は一切販売活動を行えないという条件です。一方「排他的」ではない「独占」は、他の代理店は一切販売活動を行うことはできないが、自社が直接販売活動を行うことは認める、という条件です。
「排他的独占」の場合は、自社も販売ができないですが、「排他的」でない「独占」の場合は、自社で販売ができるので、少なくとも市場開拓の機会を失うというリスクは回避でき、またそれによって独占販売代理店に対する牽制の役割を果たすことができます。
この場合、英語では、「排他的独占」を”exclusive”と表現し、「排他的」ではない「独占」を”sole”と表現することで区別することができます。
または、排他的独占販売代理店を与えざるを得ない場合に、最初の段階では契約期間を自動更新にするのではなく、1年や2年など期間を定めるというのも一つの方法です。
なお、独占販売代理権を認める場合、競業品の取り扱い禁止や最低購入数量を定めておきたいところですが、これらの義務は市場開拓の初期段階では合意をすることは簡単ではありません。
そういった意味でも、最初は権利も義務も緩やかに、そして関係が継続するにつれて、与える権利を大きくするならばそれに応じて義務も大きくしていくといったコミュニケーションも大切であると思います。