水質汚濁防止法は、特定施設を有する事業場(特定事業場)から排出される水について、 排水基準以下の濃度で排水することを義務づけています。
そのため、まず特定施設に該当するかどうかが最初のチェックポイントとなります。
特定施設は水質汚濁防止法施行令別表第一(第一条関係)に列挙されています。大分類で74項目あります。環境省の「令和2年度水質汚濁防止法の施行状況」によると、事業所数の上位10業種は以下の通りとなっています。
- 旅館業 64,996
- 自動式車両洗浄施設 32,269
- 畜産農業 25,166
- 洗濯業 19,566
- し尿処理施設 10,399
- 豆腐・煮豆製造業 10,336
- し尿浄化槽 9,523
- 水産食料品製造業 8,106
- 酸・アルカリ表面処理施設 5,879
- 科学技術に関する研究・試験・検査を行う事業場 5,032
上記10業種の事業場の合計は191,272で、全特定事業場数の74%にあたり、これら191,272事業場の約90%が、1日あたりの平均排出量が50㎤未満の規模の小さい事業場とのことです。
水質汚濁防止法では、特定施設を有する事業場(特定事業場)から排出される水について、 排水基準以下の濃度で排水することを義務づけています。排水基準により規定される物質は大きく次の2つに分類されています。
- 人の健康に係る被害を生ずるおそれのある物質(有害物質)を含む排水に係る項目
- 水の汚染状態を示す項目(生活環境項目)
有害物質については 27 項目の基準が設定されており、 有害物質を排出するすべての特定事業場に基準が適用されます。生活環境項目については、15 項目の基準が設定されており、1日の平均的な排水量が 50㎤以上の特定事業場が対象のため、上記データによると対象となる事業場数は35%以下ということになると思います。
規制基準は以下の通りとなっています。
- 一律排水基準:国が定める全国一律の基準
- 上乗せ排水基準:一律排水基準だけでは水質汚濁の防止が不十分な地域において、都道府県が条例によって定めるより厳しい基準。
- 総量規制基準:事業場ごとの基準のみによっては環境基準の達成が 困難な地域(東京湾、伊勢湾、瀬戸内海)において、一定規模以上の事業場から 排出される排出水の汚濁負荷量の許容限度として適用される基準。
事前規制
特定施設を設置しようとするときは、水質汚濁防止法に基づく届出が必要です。都道府県知事は、届出があった場合において、
- 特定事業場の排出水が排出基準に適合しないと認めるとき
- 特定地下浸透水が有害物質を含むものとして環境省令で定める要件に該当すると認めるとき、又は地下水汚染の未然防止の為の構造基準等として環境省令で定める基準に適合しないと認めるとき
は、特定施設の構造や使用の方法、汚水等の処理方法に関する計画の変更等を命ずることができます。
通常時規制
都道府県知事は、以下の場合は、期限を定めて特定施設の構造や使用の方法、汚水等の処理方法の改善を命じ、又は特定施設の使用や排出水の排出、特定地下浸透水の浸透の一時停止を命ずることができます。
- 特定事業場からの排出水が排水基準に適合しないおそれがあると認めるとき
- 環境省令で定める要件に該当する特定地下浸透水を浸透させるおそれがあると認めるとき
都道府県知事は、有害物質使用特定施設又は有害物質貯蔵指定施設を設置している者に対して、有害物質を含む水の地下への浸透の防止のための環境省令で定める基準を遵守 していないと認めるときは、当該施設の構造、設備若しくは使用の方法の改善を命じ、又は使用の一時停止を命ずることができます
都道府県知事は、特定事業場又は有害物質貯蔵指定事業場において有害物質に該 当る物質を含む水の地下への浸透があったことにより、現に人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがあると認めるときは、当該特定事業場の設置者や設置者であった者に対 し、相当の期限を定めて、地下水の水質浄化のための措置をとることを命ずることができます。
都道府県知事は、水質汚濁防止法の施行に必要な限度において、その職員に、特定事業場又は有害物質貯蔵指定施設に立ち入り、特定施設や汚水等の処理施設を始め、特定施設において使用する原料や当該特定事業場敷地内の土壌、地下水等について検査させることができます。
排水基準に適合しない排出水 を排出した場合は、排出した者は6か月以下の懲役又は 50 万円以下の罰金に処せられることになります。
異常時等の対応
特定施設の破損等により有害物質を含む水等が公共用水域に排出又は地下浸透し、人の健康や生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるときは、特定事業場の設置者は、直ちに当該有害物質を含む水等の排出・浸透防止を図るべく応急措置を講ずるとともに、速やかにその 事故の状況と講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければなりません。
指定施設の破損等により有害物質又は指定物質を含む水が公共用水域に排出又は地下浸透し、人の健康や生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるときは、指定事業場の設置者は、直ちに当該有害物質又は指定物質を含む水等の排出・浸透防止を図るべく応急措置を 講ずるとともに、速やかにその事故の状況と講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければならなりません。
貯油施設等を設置する者についても、当該貯油施設等の破損等により油を含む水が公共用水域に排出又は地下浸透し、生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるときは、直ちに当該油を含む水の排出・浸透防止を図るべく応急措置を講ずるとともに、速やかにその事故の状況と講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければなりません。