ネイチャーポジティブ経済移行戦略と生物多様性民間参画ガイドライン

国際統合報告評議会(IIRC)が公表している国際統合フレームワークでは、資本は

  • 財務資本
  • 製造資本
  • 知的資本
  • 人的資本
  • 社会・関係資本
  • 自然資本

の6つに分類されています。自然資本は6つの資本のうちの一つとして企業の活動は自然に依存するとともに、その活用等により新たな価値創造の機会を得ることができるとしています。このように、自然資本は、今、事業活動にとってリスク・機会の両面でマテリアリティとして位置づけられています。

2024 年 3 月には、環境省、農林水産省、経済産業省、国土交通省の連名で「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」が策定され、ネイチャーポジティブ経済への移行の必要性、移行にあたって企業が押えるべき要素、新たなビジネス機会の具体例、ネイチャーポジティブ経済への移行に向けた国の具体施策が示されています。

ネイチャーポジティブ経済移行戦略では以下の3点が定められています。

  • 企業の価値創造プロセスとビジネス機会の具体例
  • ネイチャーポジティブ経営への移行に当たって企業が押えるべき要素
  • 国の施策によるバックアップ

2023年には、ネイチャーポジティブ経営に向けて生物多様性民間参画ガイドラインが定められました。ガイドラインでは基本プロセスとして、以下の4つのプロセスが整理されており、継続的な改善活動が期待されています。

  1. 社内体制を構築し、自社の事業活動・サプライチェーンが生物多様性 に及ぼす影響の把握により、経営としての重要事項を抽出
  2. その結果を踏まえ、自社としての戦略や対応方針、裏付けとなる指標・目標を設定し、目標に向けた具体的な取組を盛り込んだ計画を策定
  3. 計画等に基づいて具体的な取組を実施
  4. 定期的なモニタリングにより、 自社の取組状況を定期的に把握・分析し、計画の進捗状況や達成度を評価するとともに、必要に応じて計画の見直しに反映

さらに横断的取組として、5. 内部の能力構築や、6.情報公開や外部ステークホルダー等とのコミュニケーションを随時実施することを推奨しています。

このガイドラインでは、サプライチェーン上のステップ(原材料調達>生産・加工>物流>販売>保守・廃棄・リサイクル)と組織内の活動の種類(土地利用・開発、保有地管理、研究開発・イノベーション、資金調達)ごとに分類し、自社事業活動に該当するものを参照する形となっています。

このように、大きな方向性として、各企業は、自社の事業活動が生物多様性にどのような負の影響を与えているか、自社の活動や製品・サービスの提供により負荷軽減への貢献があるか、といった内容を評価し、指標等を選定し、情報公開するようになることが求められるようになっていると言えます。

自社の企業活動の環境への影響評価、負荷軽減への評価の指標化について、これから検討段階にある場合はご連絡をいただけますと幸いです。