加工貿易

<高度成長期を支えた加工貿易>

日本の高度成長期は加工貿易によって支えられたということができます。

日本はそもそもエネルギー資源は輸入に依存しています。ナフサ由来のプラスチックをはじめ多くの製品が輸入した原材料から加工されています。鉄鉱石や石炭も輸入なので製鉄も広義には加工ということができます。製紙産業においても原材料である木材チップが6割以上が輸入なので加工の一つということができます。

日本の輸出産業を支えてきた自動車や家電も、プラスチックや金属からできています。これらの製品もすべて加工貿易なしには競争力を得ることはできなかったと思います。

<加工貿易を支えた商社>

さて、日本の貿易の歴史は外為法なしに述べることはできません。外為法は1949年に制定され、「対外取引原則禁止」からのスタートでした。その後1980年の改正において対外取引を原則自由にする法体系に改められました。しかしその段階ではまだ事前の許可・届出が必要でした。この対外取引の包括許可を保有していたのが一部の貿易商社です。そのため、1998年の外為法改正で事前の許可・届出が原則廃止になるまで、多くの企業が原材料の輸入や加工後の製品の輸出を商社に頼っていました。

加工貿易により、商社はディストリビューターではなく、ビジネスを創造する役割を果たします。例えば海外から丸太を輸入します。その丸太を製材メーカーに販売します。その後、丸太を販売した製材メーカーから、加工後のベニヤ板を全量購入します。今度はそのベニヤ板を住宅設備メーカーや梱包材メーカー等に販売します。場合によってはその完成品を購入して、今度は海外に輸出します。このように商社は「商流」と呼ばれる原材料から最終製品までの取引の流れに何度も介在します。

<丸抱え先>

商社は商流に介在する都度、中間マージンを得ます。一つの商社が、一つの商流に何度も介在することは商社にとって大きく次の2つの意味を持ちます。

  • 一つの売買における中間マージン率が低くても、商流全体で大きな利益を得ることができる。
  • 販売した先から全量買い上げるので、販売先が中小企業でも債権回収リスクは殆どない。

このように、加工貿易における商社のユニークな役割は、加工という仕事に従事する中小企業を育てる役割を果たしてきました。販売した後で、加工品を全量買い上げる対象の取引先のことを商社用語で「丸抱え先」と呼びます。

<商社金融>

この「丸抱え先」に対して商社が販売する際には、支払サイトは例えば120日など長期間にします。一方で商社が全量買い付ける際には支払サイトは例えば30日など短期間にします。例えば加工に要する期間が1ヶ月、毎月決まった取引があるとします。

例えば4月に加工メーカーが原材料を仕入れます。仕入れ代金を商社に支払うのは120日後、つまり8月末です。1ヶ月後、5月に加工メーカーは商社に製品を販売します。すると30日後、つまり6月末には販売代金が商社から支払われます。

このように、仕入代金を支払う前に、販売代金が先に支払われます。これを商社金融といいます。商社金融は、売買と直結しているので安定しています。商社金融によって、中小企業は従業員を雇ったり設備投資を行ったりして生産性を高めることができました。

このように、加工貿易における商社の活動は、日本の中小企業の競争力を高める上で大きな役割を果たしてきました。