投稿者: Kouhaku@Table

  • ドローンを飛ばすには許可は必要?

    土木建築の現場や農業でドローンが使われるようになっています。ドローンを購入して、いざ現場で利用しようと思ったら、許可が降りなかった、ということは避ける必要があります。

    ドローンの飛行に許可が必要かどうか、簡潔に説明させていただきます。

    関係する法律

    無人航空機の飛行は航空法で規制されています。無人航空機とは「航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船 であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることが できるもの(100g未満の重量(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)のものを除く)」です。いわゆるドローン(マルチローター)、ラジコン機(飛行機) 、農薬散布用ヘリコプター(ヘリコプター)等が該当します。

    屋外を飛行させる100g以上のすべての無人航空機は、登録を申請し、機体に登録記号を表示し、リモートID機能を備えることが法律で義務づけられています。

    その上で、飛行許可・承認が必要ない非特定飛行(カテゴリーⅠ飛行)と飛行許可が必要な特定飛行(カテゴリーⅡ及びカテゴリーⅢ)に分かれます。特定飛行(カテゴリーⅡ及びカテゴリーⅢ)は、航空法で規制されている空域や方法で無人航空機を飛行させる場合で、 技能証明を持った者が機体認証を有する無人航空機を飛行させる一部の場合を除き飛行許可・承認申請手続きを行い、あらかじめ国土交通大臣の 許可・承認を受ける必要があります。適切な許可・承認を得ずに飛行させる等した場合は懲役または罰金の対象となります。なお、無人航空機はカテゴリーⅢ飛行を除き、第三者の上空を飛行できません。

    特定飛行に該当する空域

    • 150m以上の上空
    • 人口集中地区の上空
    • 緊急用務空域

    特定飛行に該当する飛行の方法

    • 夜間での飛行
    • 目視外での飛行
    • 人または物件と距離を確保できない飛行
    • 催し場所上空での飛行
    • 危険物の輸送
    • 物件の投下

    無人航空機の飛行許可・承認申請

    以下のいずれか一つに該当する場合は、カテゴリⅡとして許可・承認申請が必要です。

    • 空港等の周辺
    • 150m以上の上空
    • 催し場所の上空
    • 危険物の輸送
    • 物件の投下

    上記のいずれにも該当しない場合でも、以下いずれに該当する場合は、第二種機体認証以上及び二等操縦者技能証明以上を有しない場合、カテゴリⅡとして許可・承認申請が必要です。

    • 人口集中地区
    • 夜間での飛行
    • 目視外での飛行
    • 人または物件との距離が30m未満

    レベル4飛行は有人地帯(第三者上空)での補助者なし目視外飛行を指します。レベル4飛行においては、第一種機体認証及び一等操縦者技能証明を有しない場合は、いずれにしても飛行不可です。第一種機体認証及び一等操縦者技能証明を有する場合、カテゴリⅢとして許可・承認申請が必要となります。

    国土交通省航空局の提供するドローン情報基盤システムですべての手続きが可能です。

    ご不明な点はお問い合わせをいただけますと幸いです。

  • 環境配慮契約法

    環境配慮契約法は、国や独立行政法人、国立大学法人、地方公共団体等の公共機関が契約を結ぶ際に、価格に加えて環境性能を含めて総合的に評価し、もっとも優れた製品やサービス等を提供する者と契約する仕組みを作り、もって、環境保全の技術や知恵が経済的にも報われる、新しい経済社会を構築することを目指し2007年11月に施行されました。

    国の機関や独立行政法人等が契約する内容として以下のものが列挙されています。

    • 電気の供給を受ける契約
    • 自動車の購入及び賃貸借にかかる契約
    • 船舶の調達に係る契約
    • 建築物に係る契約
    • 建築物の設計に係る契約
    • 建築物の維持管理に係る契約
    • 建築物の回収に係る契約
    • 産業廃棄物の処理に係る契約
    • 環境に配慮したOA機器の調達

    詳細は2023年2月の「環境配慮契約法に基づく基本方針」、2025年2月の「国及び独立行政法人等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する基本方針(環境配慮契約法基本方針)関連資料」に記載されています。

    この環境配慮契約法に基づく基本方針は必要に応じて見直しを行うこととされており、令和7年度も「令和7年度環境配慮契約法基本方針検討会」が開催されています。

    国の機関や独立行政法人等に供給をしようとする事業者は、この基本方針を理解した上で、適合する内容で提案を行う必要があることになります。

    例えば、電気の供給を受ける契約では、入札に参加する者に必要な資格として、温室効果ガス等の排出の程度を示す係数、環 境への負荷の低減に関する取組の状況(再生可能エネルギーの導入状況、未利用エネルギーの活用状況)並びに電源構成及び温室効果ガス等の排出の程度を示す係数の開示の状況等を定めることが必要です。

    また、建築の設計に係る契約については温室効果ガス等の排出の削減に配慮する内容を含む技術提案が求められ、

    • 設計成果に求める施設の長寿命化、省エネルギー・省資源、自然エネルギーの利用、環境負荷低減に配慮した木材等の資機材の利用等を踏まえた環境保全性能
    • 必 要に応じ、エネルギー管理機能の導入

    等を契約図書に明記するものと定められています。建築物の維持管理に係る契約においても温室効果ガス等の排出の削減に配慮した内容を契約図書に明記するものとされています。建築物の改修に係る契約についてはESCO事業とその他の省エネ回収事業に係る契約と分けて定められており、その他の省エネ改修事業の立案に当たっては、当該施設の運用段階におけるエネ
    ルギー消費量等のデータの活用に努めるとともに、必要に応じ、改修後の維持管理における運用改善に資するエネルギー管理機能の拡充を図るものとする、とされています。

    産業廃棄物の処理に係る契約については、入札に参加する者に必要な資格として、温室効果ガス等の排出削減に関する取組の状況並びに適正な産業廃棄物処理の実施に関する能力及び実績等を定めた上で、裾切り方式によるものとする、とされています。

    このように、国及び国の機関と契約をする際には、「温室効果ガス等の排出削減」の効果が価格同様の競争入札の要件となっております。国及び国の機関と契約をするにあたって、提供しようとする財・サービスについて、どれくらいの温室効果ガス削減効果を期待することができるか、示すことができる必要があります。

  • Setting the Table 2025年7月23日

    農林水産省 「食育実践優良法人制度」

    経済産業省の行う「健康経営優良法人制度」は、
    企業に健康経営を定着させる上で大きな役割を果たしました。

    従業員の健康に投資する
    その投資のリターンは、
    従業員が健康になる
    というだけでなく、
    企業の業績が向上する。

    ちょうど人的資本経営の重要性が唱えられたタイミングとも一致し、
    健康経営優良法人に認定された企業、
    その中でも健康経営銘柄に認定された企業は、
    株式市場で高い評価を受け、
    財務諸表の数値上の経営状態だけでなく、
    新しい企業評価の基準を提供しました。

    農林水産省は、健康経営優良認定制度に
    申請している法人のうち、
    従業員に対して「食生活の改善」に資する取り組みを実施し、
    かつ、複数の条件を満たした法人を
    「食育実践優良法人」として認定する制度を開始しました。

    健康経営は、従業員一人ひとりに
    健康の大切さを認識してもらう上で、
    大きな役割を果たしています。
    食育実践は、どうように、食育の大切さを
    認識してもらうきっかけになるでしょうか?

    もしなれば、フードロスの削減、
    地産地消など、健康以外のテーマについても、
    従業員の関心が高まる効果が期待できます。

    国民一人一人が、
    ほんの少しだけ、
    何かに前向きに取り組むことができれば、
    社会はよくなります。
    そういったことを目指した行政の取り組みには、
    積極的に関与していきたいものです。

    国土交通省 「荷主・物流事業者間の輸出入通関依頼を円滑に」

    FedEX、DHL、EMSなど、ドア ツー ドアで
    国を超えて貨物が届くサービスが多数存在しています。

    小口貨物で、関税がかからず、個人消費目的ならば、
    こういったサービスでダイレクトに貨物を輸出入できることもあり、
    越境ECのようなサービスも発展し、決済方法の多様化で、
    ますます便利になっています。

    しかしこれは輸出入全体の極々一部の話。

    通関手続きのためには事前の許可や承認を得なければ
    ならないのが大前提です。
    そして、輸出入する危険物、食品の検疫など
    輸出入する製品によって用意すべき書類も手続きも異なります。

    今回、行政のシステムと民間のシステムが
    相互に連携することになりました。
    これにより港湾関連手続きの利便性が向上することになります。

    「もの」と「カネ」以外にも「書類」の流れが必要な輸出入。
    この「書類」の手続きには行政が関与します。
    行政が関与する手続きの利便性が高まると、
    生産性は向上します。

    システムを提供する側にとっては、
    もっと生産性を向上させるアイデアを提供することによって、
    新しいビジネスを創出するチャンスでもあると言えます。

  • 水質汚濁防止法

    水質汚濁防止法は、特定施設を有する事業場(特定事業場)から排出される水について、 排水基準以下の濃度で排水することを義務づけています。

    そのため、まず特定施設に該当するかどうかが最初のチェックポイントとなります。

    特定施設は水質汚濁防止法施行令別表第一(第一条関係)に列挙されています。大分類で74項目あります。環境省の「令和2年度水質汚濁防止法の施行状況」によると、事業所数の上位10業種は以下の通りとなっています。

    • 旅館業 64,996
    • 自動式車両洗浄施設 32,269
    • 畜産農業 25,166
    • 洗濯業 19,566
    • し尿処理施設 10,399
    • 豆腐・煮豆製造業 10,336
    • し尿浄化槽 9,523
    • 水産食料品製造業 8,106
    • 酸・アルカリ表面処理施設 5,879
    • 科学技術に関する研究・試験・検査を行う事業場 5,032

    上記10業種の事業場の合計は191,272で、全特定事業場数の74%にあたり、これら191,272事業場の約90%が、1日あたりの平均排出量が50㎤未満の規模の小さい事業場とのことです。

    水質汚濁防止法では、特定施設を有する事業場(特定事業場)から排出される水について、 排水基準以下の濃度で排水することを義務づけています。排水基準により規定される物質は大きく次の2つに分類されています。

    • 人の健康に係る被害を生ずるおそれのある物質(有害物質)を含む排水に係る項目
    • 水の汚染状態を示す項目(生活環境項目)

    有害物質については 27 項目の基準が設定されており、 有害物質を排出するすべての特定事業場に基準が適用されます。生活環境項目については、15 項目の基準が設定されており、1日の平均的な排水量が 50㎤以上の特定事業場が対象のため、上記データによると対象となる事業場数は35%以下ということになると思います。

    規制基準は以下の通りとなっています。

    • 一律排水基準:国が定める全国一律の基準
    • 上乗せ排水基準:一律排水基準だけでは水質汚濁の防止が不十分な地域において、都道府県が条例によって定めるより厳しい基準。
    • 総量規制基準:事業場ごとの基準のみによっては環境基準の達成が 困難な地域(東京湾、伊勢湾、瀬戸内海)において、一定規模以上の事業場から 排出される排出水の汚濁負荷量の許容限度として適用される基準。

    事前規制

    特定施設を設置しようとするときは、水質汚濁防止法に基づく届出が必要です。都道府県知事は、届出があった場合において、

    • 特定事業場の排出水が排出基準に適合しないと認めるとき
    • 特定地下浸透水が有害物質を含むものとして環境省令で定める要件に該当すると認めるとき、又は地下水汚染の未然防止の為の構造基準等として環境省令で定める基準に適合しないと認めるとき

    は、特定施設の構造や使用の方法、汚水等の処理方法に関する計画の変更等を命ずることができます。

    通常時規制

    都道府県知事は、以下の場合は、期限を定めて特定施設の構造や使用の方法、汚水等の処理方法の改善を命じ、又は特定施設の使用や排出水の排出、特定地下浸透水の浸透の一時停止を命ずることができます。

    • 特定事業場からの排出水が排水基準に適合しないおそれがあると認めるとき
    • 環境省令で定める要件に該当する特定地下浸透水を浸透させるおそれがあると認めるとき

    都道府県知事は、有害物質使用特定施設又は有害物質貯蔵指定施設を設置している者に対して、有害物質を含む水の地下への浸透の防止のための環境省令で定める基準を遵守 していないと認めるときは、当該施設の構造、設備若しくは使用の方法の改善を命じ、又は使用の一時停止を命ずることができます

    都道府県知事は、特定事業場又は有害物質貯蔵指定事業場において有害物質に該 当る物質を含む水の地下への浸透があったことにより、現に人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがあると認めるときは、当該特定事業場の設置者や設置者であった者に対 し、相当の期限を定めて、地下水の水質浄化のための措置をとることを命ずることができます。

    都道府県知事は、水質汚濁防止法の施行に必要な限度において、その職員に、特定事業場又は有害物質貯蔵指定施設に立ち入り、特定施設や汚水等の処理施設を始め、特定施設において使用する原料や当該特定事業場敷地内の土壌、地下水等について検査させることができます。

    排水基準に適合しない排出水 を排出した場合は、排出した者は6か月以下の懲役又は 50 万円以下の罰金に処せられることになります。

    異常時等の対応

    特定施設の破損等により有害物質を含む水等が公共用水域に排出又は地下浸透し、人の健康や生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるときは、特定事業場の設置者は、直ちに当該有害物質を含む水等の排出・浸透防止を図るべく応急措置を講ずるとともに、速やかにその 事故の状況と講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければなりません。

    指定施設の破損等により有害物質又は指定物質を含む水が公共用水域に排出又は地下浸透し、人の健康や生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるときは、指定事業場の設置者は、直ちに当該有害物質又は指定物質を含む水等の排出・浸透防止を図るべく応急措置を 講ずるとともに、速やかにその事故の状況と講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければならなりません。

    貯油施設等を設置する者についても、当該貯油施設等の破損等により油を含む水が公共用水域に排出又は地下浸透し、生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるときは、直ちに当該油を含む水の排出・浸透防止を図るべく応急措置を講ずるとともに、速やかにその事故の状況と講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければなりません。

  • ウェブアクセシビリティ

    2022年5月に「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」が成立・施行され、第3条では以下の内容を規定しています。

    • 障害者による情報の取得等の手段について、可能な限り、その障害の種類及び程度に応じた手段を選択することができるようにすること。
    • 全ての障害者が地域にかかわらず等しくその必要とする情報を十分に取得等できるようにすること。
    • 障害者が取得する情報は、障害者でない者が取得する情報と同一の内容の情報を障害者でない者と同一の時点において取得することができるようにすること。
    • 全ての障害者が通信ネットワークの利用及び情報通信技術の活用を通じ、その必要とする情報を十分に取得等ができるようにすること。

    障害者に限らず、すべての人が情報への共通のアクセスを得られることが理想と言え、欧米ではこの取り組みは以前からかなり進んでいます。日本においても、情報を発信する側が、アクセシビリティを確保することの重要性はこれからますます高まっていくことになると思われます。

    2024年4月1日から、障害者差別解消法が改正され、国や地方公共団体などに義務付けられている合理的配慮の提供が、民間の事業者も義務化されました。現時点では努力義務ですが、WEBサイトでは「JIS X 8341-3:2016」に準拠するということが、努力義務とはいえ明確になっています。

    情報アクセシビリティ自己評価様式が総務省から提供されています。JIS X 8341-3の技術基準を見ると、

    • すべての非テキストコンテンツには、拡大印刷、点字、音声、シンボル、平易な言葉などの利用者が必要とする様式に変更できるように、代替テキストを提供する
    • 時間依存メディアには代替コンテンツを提供する。
    • 情報、及び構造を損なうことなく、様々な方式(例えば、よりシンプルなレイアウト)で提供できるようにコンテンツを制作する。
    • コンテンツを、利用者にとって見やすく、聞きやすいものにする。これには前景と背景を区別することも含む。
    • すべての機能をキーボートから利用できるようにする。
    • 利用者がコンテンツを読み、かつ、使用するために十分な時間を提供する。
    • 発作を引き起こすようなコンテンツを制作しない。
    • 利用者がナビゲートしたり、コンテンツを探し出したり、現在一を確認したりすることを手助けする手段を提供する。

    その他、上記以外にも詳細が記載されています。

    また、デジタル庁はウェブアクセシビリティ導入ガイドブックを公開しており、こちらは視覚的に読みやすいないようとなっています。

    ウェブアクセシビリティの基準を満たすためには、まずはウェブアクセシビリティ方針を決め、目標とする適合レベルを定め、ウェブアクセシビリティの試験を行い、試験結果を公開する、といった手順が定められています。

    インターネットを通じた情報発信、情報収集、コミュニケーションが一般的となり、ビジネスにおいてもウェブサイトが欠かせないツールとなっている今、ウェブアクセシビリティを向上させることは不可欠になっていくと思います。

  • プラスチック資源循環促進法

    環境に関する法制は水質汚濁防止法、大気汚染防止法、土壌汚染対策法、悪臭防止法、その他多数あり、まとめて環境法と言われています。

    これらの法律の多くが、環境を公益と位置付け、憲法の定める公共の利益のための財産権の制約を根拠として、各人、特に事業者が守るべき基準を定めて、違反をした場合は制裁を課する、という制度体系になっています。

    一方で、2022年4月1日に施行された「プラスチックにかかる資源循環の促進等に関する法律(以下プラスチック資源循環促進法」)はプラスチック使用製品のライフサイクル全般であらゆる主体による取り組みを「促進」することで循環型経済への移行を目指すことを目的としており、他の環境法の「基準を満たさない場合は制裁」という体系とは少し異なる仕組みになっています。

    プラスチック資源循環促進法では、3R(Reduce, Reuse, Recycle) +Renewable を促進するために、以下のそれぞれの主体毎に指針が定められています。

    • 設計・製造
    • 販売・提供
    • 排出・回収・リサイクル

    設計・製造の事業者は指針に適合していることの認定を受けるためには、指定調査機関に設計調査の申請を行い、特に優れた設計を国が認定するという、制度になっています。これは任意の仕組みと言えます。

    また、自主回収・再資源化事業の認定を受けた場合は、使用済みプラスチックの自主回収、再資源化について、認定事業者は廃棄物事業法上の業許可が不要となるといったことも定められています。

    一方で、プラスチック使用製品産業廃棄物等を排出する事業者は、積極的に排出の抑制・再資源化等に取り組むことが求められ、情報公開が義務化されます。主務大臣が判断基準に基づき、必要な指導や助言を行うとともに、多量排出事業者は、勧告・公表・命令等の対象となります。

    このようなプラスチックのリサイクルを促すことを目的とした法律が施行されたことにより、プラスチック製品の製造業者は、設計段階からプラスチックの機能だけでなく、リサイクルや再生利用を考慮に入れる必要があります。

    またプラスチックのリサイクル技術に従来以上の付加価値が与えられることになるため、リサイクル事業者にとっては新たな事業創出の機会とも言えるかも知れません。

    プラスチック資源循環促進法には、詳細な項目が定められており、多くの製造業、小売業、サービス業がこの制度の対象となります。

    プラスチック資源循環促進法への対応もご支援しておりますので、詳細お問い合わせまたはお困りの際はご連絡をいただけますと幸いです。

  • Setting the Table 2025年7月22日

    United Nations Climate Change
    A Decade After Paris, New Work Programme Drives Stronger, More Coordinated Climate Action

    1992年から国際会合COP(Conference of Parties)
    が開催され、
    COPを舞台に地球温暖化の問題に対して
    議論が重ねられてきました。

    この国際会合において大きな進展をもたらしたのが、
    京都で開催されたCOP3を経て採択された
    京都議定書です。

    京都議定書は
    2008年〜2012年までの5年間に
    温室効果ガスの排出量を
    1990年よりも5%削減することを、
    「法的拘束力」のある目標として定め、
    さらにその期間が終了した後の
    2013年以降も新たな取り組みを合意して、
    継続していくことを合意しました。

    しかしながら京都議定書で
    温室効果ガスの削減義務を
    負ったのは先進国だけであったこと、
    世界最大の温室効果ガス排出国アメリカが
    京都議定書に参加しなかったことなど、
    国際的な合意としては未完成でした。

    そして2009年にコペンハーゲンで開催された
    COP15では2013年以降の合意を定める予定
    であったにもかかわらず、
    国際合意は得られませんでした。

    翌年カンクンで開催された
    COP16では法的拘束力のある国際条約ではなく、
    各国の自主的な削減目標達成に委ねる枠組みとして
    合意することになりましたが、
    2013年以降の枠組みでは京都議定書は
    実質的にその実効性を失い、
    ロシア、
    さらには日本までもが合意から抜けてしまいました。

    この流れを大きく変えたのが
    2011年末にダーバンで開催されたCOP17です。

    議長国である南アフリカの
    粘り強い取り組みにより、
    2020年以降の期間では
    再び法的拘束力のある合意を行うことを目標にして、
    世界は合意に向けた交渉をスタートさせ、
    そして2015年末にパリで開催されたCOP21では
    議長国フランスの緻密なリーダーシップによる
    アメリカと中国の周到な事前交渉の結果、
    先進国・途上国含めた196カ国の間で
    「“すべての国”が、同じ“拘束力のある国際条約”の下で温暖化対策に取り組む『パリ協定』がついに成立しました」
    (小西雅子著『地球温暖化は解決できるのか』(2016年岩波ジュニア新書)

    すべての国家が共通の目標に向かって
    自国を拘束する合意を行うことは
    非常に稀であり、
    産業革命後温室効果ガスの排出を続けてきた先進国と、
    21世紀になってからようやく経済成長を迎え、
    これから温室効果ガス排出が増えて行くことが見込まれる途上国が、
    対等な立場で合意したことは
    国際的な枠組みの上で画期的な出来事であり、
    奇跡とも言えることでした。

    この記事ではパリ協定から10年たった今年、
    パリ協定は各国に国家レベルの政策を促したものの、
    枠組みにとどまり、
    気候変動対策は
    世界の隅々まで行き渡るさらなる明確な実行までには
    至っていないことに言及しています。

    今年11月にCOP 30が開催されます。
    アジェンダは以下の6つのエリアで、
    アクションプランを定めることになります。

    1.Transitioning Energy, Industry, and Transport
    エネルギー、産業及び輸送の以降
    2.Stewarding Forests, Oceans, and Biodiversity
    森林、海洋、生物多様性の保護
    3.Transforming Agriculture and Food Systems
    農業及びフードシステムの見直し
    4.Building Resilience for Cities, Infrastructure, and Water
    都市、インフラ、水資源の回復力の構築
    5.Fostering Human and Social Development
    人間及び社会の開発育成
    6.Cross-cutting enablers and accelerators 
    横断的な実現者及び支援者

    そしてこの記事では、
    自発的なアクションの枠組みである
    Cooperative Climate Initiatives (CCIs) 
    が紹介されています。

    CCIへの登録がNAZCAに承認されると、
    NAZCAによりプロフィールが公表され、
    毎年9月に開催されている年間報告に
    参加することができます。

    現時点でNAZCAのページを見てみると、
    20,560社が参加しています。

    現時点での日本のデータを見ると、
    1509社、558機関、
    2府県、196市がすでに参加しています。

  • 生産材

    工場での生産のために様々な設備や消耗品が使用されています。

    生産ライン、ロボット、搬送機器、専用設備、工作機械などの資本財
    PLCなどのFA機器や画像処理のためのカメラ、
    ドリル、エンドミル、チップ、切削油
    さらには手袋や安全靴なども欠かせません。

    工場によっては測定のための定温ルームや、クリーンルームもあり、そういった環境を保つための設備も欠かせません。

    量産製品を製造している工場で、ドリル1本がないために生産ができないということになると、大きな問題が発生します。

    そのため生産材の調達は、原材料や部品などの中間材の調達と同様に、重要な意味を持ちます。

    日本企業が海外でモノづくりをする場合、最初はノックダウン方式で、部品も生産材もすべて日本から海外に送るというところから初めるかも知れませんが、現地拠点が安定的に継続的に稼働していく上では、現地調達をしなければなりません。

    日本と同じ商品を同じ品質で海外拠点で作るためには、現地調達で日本と同じ生産材を購入できることが理想ですが、価格競争力や調達の安定性を考え、現地で新たな生産材を評価し、新規購入をする場合もあります。

    こういった形で、日本企業の海外でのモノづくりは、現地での新たなサプライチェーンの構築に大きな貢献をしてきたと言えます。日本企業だけでなく、ドイツやアメリカの企業も、中国、東欧、中米、東南アジア等でサプライチェーンを構築してきました。

    高品質な生産材は新興国の生産材メーカーが簡単に製造できるものではなく、どの市場でもやはり欧米と日本の企業の製品が高いシャアを持っています。
    近年では台湾や韓国の生産材メーカーも高品質の生産材を相対的に低価格で提供し、シェアを高めています。中国、東欧、中米、東南アジア等のモノづくりも、
    日米欧資本の企業だけでなく、中国、台湾、韓国、その他現地資本の企業の実力が高まっています。

    生産材の調達については、
    ・外資工場がノックダウンで本国から調達
    ・外資工場が外資製生産材を現地で調達
    ・現地資本工場が現地製生産材を調達
    ・現地資本工場が外資生産材を現地で調達
    ・外資工場が現地製生産材を現地で評価し調達
    といった様々な形態がありますが、いずれの分野でも将来的にはネット通販での調達が増えていくことになるでしょう。生産材のマーケットは大きく、裾野も広いため、この分野のマーケットリーダーは大きな影響力を持つことになるかも知れません。

    日本の生産材メーカーが、その事業規模にかかわらず、様々なチャネルを活用して海外に製品を輸出する機会は増えていくことになると思います。そのための貿易実務、国際決済などの知識やノウハウ、そして安全保障輸出管理等の規制対応はますます重要になっていくと思います。

  • ヘルスケア産業

    人の健康はお金には換算できません。その点で健康は「産業」とは言えないでしょう。

    健康の維持のためには、多くのステークホルダーが関わっています。医療機関、医療機器メーカー、製薬、さらには院内設備、薬の卸、健康診断、スポーツクラブなど

    健康に関わる事業は数多く、かつ、一つ一つの規模も決して小さくありません。

    そして、医療や健康は行政と密接に関わっており、医師法、医療法など法規制も多く厳格、健康保険制度は地方自治体、健康保険組合、協会けんぽ等の保険者が
    担っています。医薬品も医療機器も販売のためには各国の許認可を得なければなりません。

    そのため、ヘルスケアをビジネスをして捉えることには心理的な抵抗感があります。

    そういった中でヘルスケア「産業」としてとらえるいくつかの大きな変化が起こっています。

    一つは医療ツーリズム。進んだ医療を受けるため、あるいはより充実した設備で医療を受けるために、富裕層を中心に国を跨いで医療を受ける人が増えています。タイは外国人患者を受け入れることのできる設備・語学の備わった病院がいくつも存在しています。インドネシアの富裕層はシンガポールで健康診断を受ける人が多いです。日本でがん検診を受ける中国の富裕層もいます。こういった医療の国際化の流れは、付随する産業の国際展開を促進することにつながると思います。

    二つ目はデータ。
    健康アプリ、母子手帳アプリをはじめ、様々な無料ソフトウェアがあります。
    日本では電子カルテ(EHR)やPersonal health Record (PHR)の仕組みも政府が積極的に推進しています。またウェアラブルデバイスでも脈拍数を測定できるなど
    医療機器としての一定の機能が備わっています。こういったアプリやコンシューマデバイスを通じて集められたデータは、これまでの治験では得られなかった新たなアウトプットを導く可能性があります。
    そして世界ダントツの超高齢社会の日本で得られたデータに基づくアウトプットは、今後日本の次に超高齢社会を迎える国々にとっての重要なソリューションとなるため、グローバル競争力を持つ新たな企業がデータの利活用から生まれるかも知れません。

    三つ目は規制の動きです。
    規制そのものが、産業育成の観点から一部緩和される傾向にあります。
    薬事承認の期間の特定を適用する事例が増えています。また規制のサンドボックス制度のように、データによる実証を根拠に、規制を見直していくような取り組みも始まっています。
    社会環境が変化するにつれて、そしてICT化が進むにつれて、規制の側にも変化が起こっています。

    ヘルスケアを「産業」として様々なベンチャー企業が誕生しています。今後大きな変化が生まれる可能性があり、注目のテーマと言えます。そして、人の命に関わる事業であるということを十分認識の上、行政の動きと密接に連携していくことが必要です。

  • Setting the Table 2025年7月19日

    国土交通省 「自動物流道路」

    「荷物そのものが自動輸送される道路」
    そんな壮大な構想が、実際に進められています。

    陸海空の輸送手段のうち、陸の輸送と言えば、
    トラックか鉄道。

    小口貨物にしても、
    コンテナ輸送貨物にしても、
    トラックドライバーの方々の
    運転するだけでなく積み下ろしたり、
    スケジュールを管理したりする
    きめ細かいノウハウによって成り立っています。

    そのトラックドライバーへの担い手不足、
    そして時間外労働の上限規制の適用により、
    物流そのものが危機になっています。

    それを専用の自動化道路をつくることで
    解決しようということで、
    「ぶっとんだ」発想のようにも思えます。

    でも資料を見る限り、
    決して夢物語ではありません。
    ビジネスモデル、
    オペレーション、
    インフラ
    の3つの分科会で検討されており、
    実際に誰がどのように運用し、
    そのために何処に何が実装されて、
    どのようにメンテされていくのか、
    具体的なイメージになっています。

    ビジネスにおいては、
    運用をサポートするシステムが誕生し、
    システムの向上とともに、
    運用前提でシステムを適用させるのではなく、
    システム前提で運用を適用させるようになっています。

    物流も、もしかしたら、
    自動物流というシステム前提に、
    陸上輸送の運用が構築されていく
    未来があるかも知れません。

    環境省 「バリューチェーン全体での脱炭素化推進モデル」

    脱炭素経営の推進。

    国際的な枠組みでも唱えられており、
    環境技術が進んでいる日本が
    リーダーシップを発揮している分野でもあります。

    一方で実施するのは政府ではなく企業。
    それも一部の大企業だけではなく、
    中小企業含めたすべての企業が
    脱炭素経営を進める必要があります。

    脱炭素経営が定着するためには、
    脱炭素経営そのものにメリットがあり、
    脱炭素経営を進めることへのインセンティブが働く必要があります。
    そのインセンティブは、
    たとえ最初は政府が創出するものであったとしても、
    中長期的には、だれもが認識できる自律的なものである必要があります。

    この「バリューチェン全体」での事業モデルは、
    このチャレンジへの具体的な取り組みとなります。

    令和7年度は、製造業、食品、製薬、紙おむつなどの企業連合が
    選定されています。
    これまでは住宅、アパレル、小売などの業界が取り組んでいます。

    企業のサプライチェーン、バリューチェーンに
    一歩一歩、脱炭素化という横櫛が
    とおり始めているように感じます。