カテゴリー: 継承・契約・権利

  • 遺言の種類に悩んだら?

    遺言の方式は複数あります。民法967条は普通の方式として
    自筆証書遺言
    公正証書遺言
    秘密証書遺言
    の三種類を定めています。
    いずれの方式においても、遺言は代理により行うことはできず、本人にしかできません。

    自筆証書遺言

    自筆証書遺言は遺言の本文、日付、氏名を自書して押印すれば完成します。他の遺言方式とは異なり証人や立ち合い人の立ち合いが要求されず、費用もかからないというメリットがありますが、紛失したり遺言書が遺族に発見されない可能性があり、また方式違反で無効となるリスクもあります。

    2020年に「法務局による遺言書の保管等に関する法律」が施行され法務省令で定める様式に従って作成した自筆証書遺言について法務局が管理することになりました。詳しくは法務局の自筆証書遺言書保管制度をご覧ください。

    公正証書遺言

    公正証書遺言は民法969条に定められています。
    証人二人以上の立ち合いがあること
    遺言の内容を公証人に口授すること
    が必要です。

    公正証書遺言のためには費用がかかりますが、内容の正確性、遺言要件の不備がないことを公証人がチェックしてくれます。さらに個々の遺言内容が明確で特定されているか、遺言が全体として矛盾がないか等を知識と経験が豊富な公証人に相談することができるので、後々遺言内容についてトラブルになりにくいというメリットもあります。そのため、公正証書遺言が最も活用されています。

    秘密証書遺言

    秘密証書遺言では、遺言者が遺言の証書に署名・押印してそれを封じ、証書に用いた印章で封印し、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨ならびに遺言書の筆者の氏名及び住所を申述します。

    公正証書遺言の場合、証人二人が立ち会うため遺言の内容を完全に秘密にすることができないのに対して、秘密証書遺言は遺言書を作成後に密封して開封しないため、遺言の内容秘密にすることができます。

    一方で、公証人が遺言の作成に関与しないため、様式や内容の不備が生じてしまう可能性が残ります。

    どの遺言方式にするか悩んだら?

    上記のように、各遺言方式にそれぞれメリット・デメリットがあり、一概にどれが望ましいと言うことはできません。

    遺言が実行されるのは遺言者の死後となります。もし遺言そのものが法的な要件を満たしていたとしても、解釈があいまいな内容や主観的な表現が含まれていたらトラブルの原因となります。

    遺言の目的が「遺言者がいなくなった時に相続人間でもめないようにしたい」ということでしたら、生きている間にプロの視点でチェックしてもらうことができる公正証書遺言を選ぶべきと言えます。

  • 相続手続きとは?

    民法は各共同相続人が相続する権利の割合を定めています。

    民法900条

    同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
    一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
    二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続人は、三分の一とする。
    三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
    四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

    法定相続は、形式的画一的に遺産に一定割合を与える仕組みです。
    もし遺産が金銭のみならば一定割合をかけて相続分を算出することができますが、実際には遺産の内容や種類は様々です。また、被相続人との生前の関わりも異なるため、機械的に相続分を算出した場合は実は不公平な結果になることがあります。

    他にも民法では遺言(902条)、特別受益(903条)、寄与分(904条の2)などの制度が定められています。また、相続放棄や限定承認といった制度もあります。

    実際のところ、相続手続きは、法定相続分を機械的に当てはめる手続きではありません。

    実際には法律上の要件を整えた上で、遺産分割の協議、調停、審判を活用して妥当な結果を実現する手続きが相続手続きであると言えます。そのため、相続手続きのためには、情報を集めたり、法定相続情報一覧図を作成したりといった、専門的な知識や経験を背景とした膨大な作業が必要となります。

    司法書士は相続登記や相続放棄等の手続きを、税理士は相続税の申告を、といった形で分野毎に業務を分担して相続手続きを進めることになります。もし相続人間の交渉や裁判条の手続きが必要になった場合は、弁護士が対応します。

    行政書士は司法書士、税理士、弁護士が担当する業務を担当することは法律上できません。相続において行政書士が担当できる業務は、相続人の調査、財産の調査、書類作成など、一部の手続きとなります。そして、だからこそ、フットワークを活かして各専門家と連携して、依頼者と最後まで伴走し続けることが、相続における本当の行政書士の役割と思います。