就職活動を開始した留学生の皆様へ

日本企業の採用には新卒採用と中途採用という二つのカテゴリがあります。

現在在学中で、来年4月から就職するための活動に取り組まれている留学生の皆様は新卒採用にエントリーされることになります。

日本の企業とアメリカの企業で働いた私の経験から日本企業への就職活動にあたって覚えておいた方がよいと思われる点をいくつか記載させていただきます。

1.ポテンシャルを重視する

海外の企業では人材教育はLearning & Developmentと表現することが多いですが、日本企業は開発よりも育成という表現を好んで使います。

開発には、新入社員がこれまでの学生時代に得た知識や技術を入社後に高める個別的な教育というニュアンスが強いですが、育成の場合、これまでの学生時代に得た知識や技術にかかわらず、入社後に一から覚えるという画一的な教育というニュアンスが強いです。

つまり、「学生時代に何をしてきたから、今何ができるか?」という即戦力よりも、「学生時代に何をしてきたから、これからどう成長できるか?」というポテンシャルが採用にあたって重要な判断材料となります。

ただし、他の新入社員と同じ教育を受けるということは、必然的に高い日本語能力が求められることになります。

日本語能力が十分でない留学生の方は、それを補うことができる他の何か、例えば英語や中国語が得意とか、専門の技術分野で特に優れているとか、そういったことを理解してもらう必要があると言えるでしょう。

2.「社会人らしさ」という暗黙のルールがある

特別な時に綺麗な身なりをして社交的なマナーに従って行動するのは当然ですが、日本企業では、特別な時ではないとき、例えば社内でデスクワークをしていたり、社内のメンバーで食事をしたりするときでも暗黙のルールのようなものがあります。

これは個人でパフォーマンスを発揮することだけでなく、チームとしてパフォーマンスを発揮する上での必要な規律として重要です。例えば、髪型を整える、時間を守る、先輩に対して丁寧な言葉を使う、といったことはチームとしての規律を守るために重視されます。日本企業では、こういった規律を守ることができる人材を「協調性が高い」という表現をして、協調性は採用にあたって一つの重要なポイントとなります。

そのため、採用の面接に遅刻するとか、相手が話をしている時にその話を遮って自分の考えを言ったりすると、印象は良くありません。

3.数年後には母国に帰りたいといった主張はネガティブな印象を与える

企業があなたの出身国に拠点をもっているとします。そして、その国の事業を強化するために、その国出身の留学生を雇用しようとしているとします。

それにも関わらず、面接で「数年後には母国に帰りたい」と言うと、それはネガティブなイメージを与えることになります。

日本では長い間、ジョブ型雇用ではなくメンバーシップ型雇用が主流でした。そのため、特定のポジションで採用するという考え方よりも、採用した後で、会社側がポジションを指定するという考え方がまだ根強く残っています。

もちろん、配属の希望を申し出ることは出来ますが、将来会社でやりたいことよりも、自分の出自を背景として特定のポジションに固執していると捉えられると、マイナスに捉えられてしまう可能があるのです。

「できるだけ長く働いてもらいたい」と「本人のポジションの希望を叶えたい」ということが、日本の会社では両立しない場合が多々あることを採用面接の時は覚えておいていただければと思います。

入社後、頑張って仕事で成果を上げることが出来れば、自分の力でその目的とするポジションを得ることができるはずです。

4.大企業と中小企業の違い

一般的に大企業は中小企業よりも生産性が高く、業務が細分化されていて専門特化されており、一つ一つの業務が効率化されています。

そのため、大企業に留学生枠で入社すると、特定の専門分野を深堀りすることができる可能性があります。一方で中小企業に入社すると幅広い業務に携わることができる可能性があります。どちらを好むかはあなた次第です。

大企業の場合は同期入社という仲間達がいます。同期入社とは、同じ年度に入社した新入社員たちで、その仲間達の中から生涯付き合うことができる友人ができることも少なくありません。同様に、大企業では同期入社の仲間達の中で出世競争といったことがあることも少なくありません。中小企業の場合、入社年度のしがらみはあまり重要ではなく、経営者との距離も近いです。全社員と対等に向き合っている経営者と一緒に仕事がしたい場合は、大企業よりも中小企業の方が向いているかも知れません。

大企業の場合、保養所があったり、会員制の福利厚生施設が使用できたり、財形貯蓄、社員持株会、企業型確定拠出年金(DC)の制度があったり、など、ベネフィット面が充実している傾向があります。また、今のところは、有給消化率100%推奨や、産休・育休推進、女性の管理職登用比率、健康経営など、働きやすい環境を構築していく姿勢も大企業の方が進んでいる傾向があると言えます。ただしこういった点は、逆に大企業よりもはるかに進んでいる中小企業もあります。制度について一定の理解を持った上で、入社を希望する企業がどのような制度を持っているか、ホームページ等で確認しておくとよいと思います。

5.長期休暇が短い

労働基準法で入社後6ヶ月間継続して勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤した場合は10日間の有給休暇が付与されますが、日本では10日間連続で有給休暇を取得することは稀です。有給休暇を取得して母国に一時帰国しようと考えている場合、その理解が得られない企業がある可能性があることを念頭においておくとよいと思います。

ただし、近年は日本企業も春節、国慶節などの長期休暇が必要なことを理解しています。面接でそういった重要な時に連続した有給休暇を取得することが許容されるかどうかを聞くことはマイナスのイメージを与えることにはならないと思います。