文部科学省
宇宙開発利用部会(第102回)
令和8年2月4日に宇宙開発利用部会が開催され、配布資料が公表されています。
宇宙戦略基金の実施方針素案も公表されており、我が国の宇宙戦略について全体像が掴める内容となっています。
一部を引用させていただきます。
<内閣府:日本成長戦略会議航空・宇宙WG(第1回資料)より>
【現状】
- 各社が、宇宙の市場規模は2030年〜40年に約1兆ドルになると予測
- World Economic Forumによると、宇宙技術を利用した新しい技術やサービスが宇宙市場の成長を牽引。それを下支えする宇宙産業(ロケットや衛星等)の市場も年率7%の成長が期待される。
- 衛星サービス(観測・通信・測位等)を提供する宇宙技術は、防災、インフラ管理、スマート農林水産業、温暖化対策などの社会課題の解決と、安全保障を担う次世代の国家インフラ
- 宇宙インフラを過度に他国に依存し続けることは、急速に拡大する宇宙市場での成長機会を逃すだけでなく、有事の際のサービス継続性含め、安全保障上の深刻なリスクを招く可能性
【宇宙戦略基金・基本方針:技術開発の方向性】
- 国内で開発された衛星や海外衛星、多様な打ち上げ需要に対応できる状況を見据え、低コスト構造の宇宙輸送システムを実現する
- 国内の民間事業者(スタートアップ含む)による小型〜大型の衛星事業(通信、観測等)や軌道上サービス等による国際競争力につながる自律的な衛星のシステムを実現する
- 月や火星圏以遠への探査や人類の活動範囲の拡大に向けた我が国に国際プレゼンスを確保する
- 2030年移行のポストISSにおける我が国の民間事業者の事業を創出・拡大する
【過去10年間の人工衛星等の打上げ数の推移】
- 2024年に軌道上に打ち上げられた人工衛星等の機数は2,822機。打ち上げ数は過去10年間で10倍に増加
- 増加の中心を占めるのは米国であり、そのうちStarlinkは2019年〜2024年の6年間で7,510機を打ち上げている
【衛星打上げにおける保有国と打上げ国の関係】
- 米国は約80%、中国は約99%の自国衛星を自国ロケットで打上げ。当該割合は日本は約50%、欧州は約45%
【宇宙活動法の見直しの基本的方向性】
- 搭載物のないロケット単体での打上げを許可対象に追加
- ダミーペイロード等の分離されない人工の物体のみを搭載した打上げを許可対象に追加
- 宇宙活動法の人工衛星の定義に該当しない、地球を回る軌道等で使用しない人工の物体も規制対象に含める
- 投入される軌道等に応じた基準を策定し、人工衛星や上記の使用しない物体の構造等をその打上げ前に確認する制度を創設、軌道遷移の際の取扱いも明確化
<宇宙開発基金(第三期)実施方針(素案)より>
【前文より】
- 輸送分野においては、既存の宇宙輸送のプレーヤーと非宇宙分野のプレーヤーとの共創による開発を発展させ、打上げから回収等といった新しい宇宙輸送システム運用のアーキテクチャの構築を目指す。
- 衛星等分野においては、既存技術では到達し得なかった革新的な成果や新たなユースケース・事業構想の創出を目指し、先端技術である光・量子センシング技術の衛星応用に向けた技術開発に重点的に取り組む必要がある。
- 探査等分野においては、我が国や ISS や「きぼう」日本実験棟を通じて培ってきた地球低軌道活動を維持・発展させ、地球低軌道に経済圏を構築するために、利用促進やユースケース拡大、ステーションに対する外的リスクへの機動対応に係る技術開発に重点的に取り組む。
【実施する9テーマ】
- 打上げシステムへの洋上活用技術
- 宇宙輸送機の大気圏再突入における熱防護技術
- 衛星応用に向けた光・量子センシング技術
- 物理AI等による宇宙システムの革新技術
- LEO(地球低軌道)利用促進技術
- LEO拠点リブースト技術
- 月・小惑星等の宇宙資源活用に向けた技術
- 宇宙技術シーズ統合・人材育成拠点
- SX基盤領域発展研究
<所感>
宇宙産業の市場規模は大きいですが、事業の数はまだ限られていて、それぞれの事業で最先端の技術が必要とされます。
技術・資金含めて、参入のハードルが非常に高いため、市場規模が拡大しても産業の裾野はなかなか広がらないと思います。
政府が明確なテーマを決めて、資金面を支援することは、新たな事業者による宇宙産業への参入の機会を創出することにつながるでしょう。
宇宙産業はハイエンドの産業であるため、一度参入したら応用範囲は広がります。企業単体だけでなく、サプライチェーン含めて網の目のようにつながった産業ができると国全体としての産業競争力が高まるに違いありません。
自動車、航空、造船、医療機器などの既存の産業で培った技術を、宇宙産業に展開したいと思うような企業が多数参入することを望みます。