資源循環のクローズドループ設計:産業廃棄物とサーキュラーエコノミー

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廃棄物のゆるやかな減少

「令和7年度産業廃棄物排出・処理状況調査」によると、令和5年度における全国の産業廃棄物の総排出量は約3億6,700万トンであり、前回の調査結果(令和4年度実績)から約680万トン(1.8%)減少している。

そしてその推移をみると年々緩やかな減少傾向にあることがわかる。

また、排出された産業廃棄物全体の54.7%に当たる約2億78万8千トンが再生利用され、2.4%に当たる約874万6千トンが最終処分されているが、令和4年度実績と比べ、令和5年度では再生利用量が約190万トン(0.9%)減少、減量化量が約465万トン(2.9%)減少、最終処分量は約27万トン(3.0%)減少となっている。

環境省の「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和6年度)について」から、一般廃棄物についても、産業廃棄物同様に、排出量・処分量ともに年々緩やかな減少傾向にあることが分かる。

令和6年8月に閣議決定された第5次循環型社会形成推進基本計画では、サーキュラーエコノミーへの移行を国家戦略として掲げており、入口側の循環利用率について2020年の16%に対して2030年に19%とする目標、出口側の循環利用率について2020年の42%に対して2030年に44%とする目標、廃棄物最終処分量について2020年の約1,300万トンに対して約1,100万トンとする目標がそれぞれ掲げられている。

廃棄物の絶対量の減少は、廃棄物の処理を業とする企業にとっては、地域での事業基盤の縮小を意味する。すでに廃棄物処理の現場では、人手不足に直面しながらも、デジタル化、災害ごみ、高度化・高純度化等の技術革新、太陽光発電パネルのリサイクルといった新たなテーマへの対応などに追われており、そういった中でサーキュラーエコノミーへの移行において自らの役割を果たしていくことは、一つの試練とも言える。

サーキュラーエコノミーへの移行の意味

廃棄物の減少は果たして産業廃棄物処理を業とする企業にとって、ビジネス・リスクなのだろうか、それともビジネス・チャンスなのだろうか?それを考えるためにそもそもサーキュラーエコノミーとは何か、について改めて考えてみたい。

「第五次循環型社会形成推進基本計画」では、サーキュラーエコノミーへの移行は、『気候変動、生物多様性の損失、環境汚染等の社会的課題を解決し、産業競争力の強化、経済安全保障、地方創生、そして質の高い暮らしの実現にも資するもの』とされている。これまでのReduce, Reuse, RecycleにRenewalを加えた3R+Renewalでは掲げられていなかった内容が網羅されており、廃棄物の削減と再利用にとどまらないより大きな経済的利益、地球規模での環境保全、そして人々の幸福といった目的が含まれている。

それではサーキュラーエコノミーと3R+Renewableとでは本質的に何が違うのだろうか。

3R+Renewableでは、排出された廃棄物を受け取り、出来る限り再利用することが社会的使命である。これは廃棄物の出口に位置して、分別した内容に応じてリサイクル・リユースできるものは市場に戻し、できないものは最終処分を行う、という従来のプロセスの延長線上にある。

一方、サーキュラーエコノミーにおいては、廃棄物については原則全量が、新たに原材料として再び投入されることが概念である。つまり、廃棄物の出口がなく、クローズドループで出口と入口がつながっているかどうかがサーキュラーエコノミーと3R+Renewableとの違いである。

3R+Renewableにとどまらず、サーキュラーエコノミーに移行できるかどうかは、廃棄物処理業改め、資源循環業の活躍にかかっているのではないだろうか?なぜならば、その出口と入口をつなげるクローズドループとしての役割を果たすことができるのは、ラスト・ワンマイルを担う収集運搬、専門性と設備をもつ中間処理、自然界との接点を持つ最終処分からなる、資源循環業をおいて他にないからである。

サーキュラーエコノミーにおいては、廃棄物を受け取るところが事業のスタートではないだろう。

おそらく原料として再生できる廃棄物についての情報を積極的に発信することで、生産者側を動かし、その廃棄物を廃棄する対象ではなく、再び投入する資源とする対象として回収していくといった活動が必要とされると思われる。つまり、資源を廃棄する可能性をなくすためにどうすればよいかを、廃棄物を排出する側に対して、製品の設計・デザインをする段階からコンサルティングしていく役割を果たしていくことが、事業のスタートになるのではないかと考える。

雲をつかむような話と感じられるかも知れないが、各社に蓄積されている分別・処理のノウハウを活用して、地域の生産者とデザインの段階から連携してバリューチェーン全体に主体的に関与していくことは、決して不可能な話ではなく、そして大きな社会的意義がある。

もしこういった活動をビジネス・チャンスととらえることができるならば、廃棄物削減に向けた様々な行政の動きは、ビジネス・リスクというよりも、むしろ追い風と考えることもできるのではないだろうか。

必要とされる「リジェネラティブ」

サーキュラーエコノミーにおいて、クローズドループを担う企業に求められるのはコンサルティングだけではない。

サーキュラーエコノミーでは財務的資本・人的資本・自然資本・知的資本・社会的資本・製造資本など、生産プロセスで投入される資本の中で、特に自然資本がフォーカスされている。

自然資本とは『森林、土壌、水、大気、生物資源など、自然によって形成される資本(ストック)のことで、自然資本から生み出されるフローを生態系サービスとして捉える』(平成26年版 図で見る環境・循環型社会・生物多様性白書)ことを意味する。

経済的な生産プロセスで投入される自然資本としては、木材、化石燃料、鉱物などが例示できるが、サーキュラーエコノミーでは投入される自然資本だけでなく、『自然資本から生み出されるフロー』としての生態系サービスという機能の方にも着目する必要がある。この生態系サービスの機能を活用した社会課題の解決策として、環境省は「自然を活用した解決策(NbS:Nature-based Solutions)の手引き」を公表しており、NbSは環境保護、防災・減災、食糧安全保障といった様々な課題を解決していくために、地域で推進されていくことが期待されている。

かつては自然界にはプラスチックなどの人工物は存在していなかったために、廃棄物はそもそも存在しておらず、生態系はその多様性によって自律的に循環していた。

その自律的な循環を取り戻すのが理想だが、私たちが産業革命以降加速度的に地球環境を破壊してきたために、生態系サービスの機能はすでに低下している。

そこで、NbSでは、サステイナブルだけではなく、積極的に生態系サービスの機能を取り戻すためのリジェネラティブな活動が求められるようになっている。資源循環業界には食品廃棄物から有機堆肥を製造している企業や、瓦や砕石などのリサイクル資材を活用して土中改善に取り組んでいる企業などの先進的な事例があるが、これらはまさにリジェネラティブな活動と言える。

もちろんサステイナブルな活動も引き続き重要であり、すべての企業に対してサステナビリティへの要請はこれからも高まっていくだろう。一方で、リジェネラティブな活動には、すべての企業が取組めるわけではない。クローズドループに位置し、かつリジェネラティブのノウハウを持って具体的に実践することができる企業には地域におけるNbSの牽引役としての役割が期待されるだろう。これらに積極的に取り組むことで、資源循環業の社会的価値はますます高まっていくはずである。

結び

環境行政はもともと水質汚濁防止や大気汚染防止などの規制行政、つまり守りが主体であった。近年は、資源回収分野においていつくかのインセンティブ制度ができ、環境保護に向けた積極的な活動を推奨するいわば攻めの要素が加わってきている。そしてサーキュラーエコノミーの実現に向けて、ファイナンス面の動きも期待されている。

サーキュラーエコノミーのクローズドループの役割を果たすことができる企業には、これから新たなビジネス機会が到来すると信じている。今後、資源循環におけるクローズドループ設計について、事例を踏まえながら紹介をしていきたい。