野菜や果物を輸出しようと思ったら

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野菜や果物など生鮮食品は加工食品と違って消費期限が極めて短く、輸出のための手続きや運送の間に品質は低下してしまいます。輸出先国毎に使用可能な農薬や衛生基準など様々な規制があり、検疫もあります。品目毎に関税もかかります。

このように、生鮮食品の輸出には乗り越えなければならない壁がたくさんあります。それにも関わらず、数多くの生産者が、これらの壁を乗り越え、生鮮食品を海外に輸出して市場を切り開いています。

農林水産省の「2025年の農林水産物・食品 輸出額(1-12月)(品目別)」によると、2025年の1年間の輸出額は以下の通りとなっています。

  • りんご 14,369百万円
  • ぶどう 4,669百万円
  • もも 2,474百万円
  • かんきつ 1,436百万円
  • かき、かき加工品 1,118百万円
  • いちご 6,736百万円
  • かんしょ・かんしょ加工品 4,465百万円
  • ながいも 3,721百万円
  • メロン  1,200百万円
  • たまねぎ 123百万円

野菜・果物の輸出市場は決して小さくないことがよくわかります。しかも現在のところ輸出先としては米国、香港、台湾、中国、韓国がその大半を占めており、伸びしろはまだまだあると言えます。

今回は野菜や果物を輸出する際の5つのポイントをご紹介します。

ポイント1 文化的価値の訴求

輸送コストや関税を踏まえると、日本産の生鮮食品が海外市場で価格で勝負することは難しく、高単価でも販売できる市場を確立することが必要です。

おなじ品目でも生産地の気候風土や技術が異なれば、産品の質が変わることは生産者の皆様に対して釈迦に説法となってしまいますが、「地域ならでは」の品質をしっかりと伝えることは、輸出において最初の、最も重要なポイントと言えます。

日本には食「文化」と呼ばれる程、食にまつわる多彩な文化が存在しています。食卓に並んだ時の色あいも大切にされますし、正月のおせち料理の中の食材は、縁起物含めて文化の宝庫とも言えます。このように、日本では伝統的に食の背景にある歴史的伝統性や物語性といった文化的価値を暗黙のうちに大切にしてきました。

海外の人にとっては理解が難しいかもしれない、それぞれの産品に存在している文化的背景をわかりやすく伝えることは海外市場での産品のブランド価値を高める上で不可欠です。

平成27年度に施行された「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」に基づく地理的表示保護制度は、世界100ヵ国を超える国で保護されており、農林水産省の食品輸出促進対策事業の一環としても施策が展開されています。「地域ならでは」の文化的背景を伝える上で、有効に活用できる制度と言えます。

ポイント2 ストーリー

和食がユネスコの無形文化遺産に登録されているなど、日本食は世界ですでに一定の地位を確立しているということができます。スシ、スキヤキ、テンプラなど一部料理のブームに終わらず、和食全体として高く評価されるようになったのは、日本の食そのものが普遍的な価値を持っているからに他なりません。

その普遍的な価値は安心・安全・健康という言葉で表現されることが多いです。

では、海外の消費者は何をもって、日本食は、安心・安全・健康という普遍的な価値があると認識しているのかというと、単品をもってではなく、良質な食材を少しづつ使って、優れた栄養バランスを綜合的に実現しているからであると思います。

生鮮食品単品では直ちに安心・安全・健康につながらないとしても、レシピがあって、日本食として食卓にならんでいる姿が伝わり、それが日本食素材として使われているシーンを想起させることができれば、「1kgいくら」という価格ではなく、固有の価値で勝負することができます。

ただ、「高級品」というだけでは売れません。贈る喜び、贈られる喜び、食べる時のワクワクなどの感情が生まれることで、「高くても買いたい」商品となります。現地で情報を受け取った人にどのような行動を促すか、というシナリオまで考えて市場開拓に取り組むことが大切です。

そういったシナリオがしっかりあれば、販促の手段は、WEB・カタログ・SNS含めて様々なチャネルが活用できます。ある卸売企業は、素材だけでなく用途も含めて写真をたくさんとって、産品毎に想いの込めたメッセージを作り、ノートに貼り付けてそのノートを持ってたくさんのバイヤーと商談してビジネスを作りました。しっかりとしたシナリオと、このような意欲さえあれば、日本産の生鮮食品は、必ずバイヤーの関心を惹きつけることができるでしょう。

ポイント3 サステナビリティ

日本の食文化は自然を尊ぶことで育まれてきました。別の表現をすれば、日本の食材は自然の恵みをそのまま受容して、手間暇かけて育てられてきたものばかりです。

山林が多くて農地が狭い日本では、大規模農園は極めて少なく、99%以上が小規模農家です。農園は規模が大きいほど生産性が高いですが、その一方で単一作物を大量に生産するためには莫大な量の水、化学肥料、農薬が必要で、生態系、土壌・水質への影響も大きいです。

商品としての野菜や果物だけでなく、その背景にあるサステナビリティも商品価値を高める重要な要素であり、環境意識の高い欧米の消費者にとって商品を選ぶ際の重要なポイントとなります。

しかしながら、いかに日本の生鮮食品が地球環境と共生して生産されていたとしても、店頭に並べば欧米の大規模農園で生産された生鮮食品との区別はつきません。

むしろ、大規模農園は資本力があるので、包装材料でリサイクル原料を使用しているなど、消費者の環境保護意識に訴求するうまいプロモーションを行ってきます。

日本での当たり前が、海外での当たり前でないことは多々あります。日本での生産プロセスをそのまま伝えるだけでも、海外のバイヤーにとっては日本産生鮮食品を選ぶ理由となることがあります。

日本の農産物直売所では、生産地の詳細と生産者の名前、場合によっては顔写真までつけて生鮮食品を販売することが増えていますが、プロセスが機械によって自動化されている大規模農園ではこういったことは難しいと思います。

ポイント4 知的財産権

日本で開発・育成されたシャイン・マスカットの苗木が海外に流出し、東南アジアや香港で中国産や韓国産のシャイン・マスカットが販売されていることが確認されたことは有名な事例ですが、このように日本の技術で開発された品種が契約を経ずに海外で不適法で栽培される事例は他にも存在しています。

良質な品質ほど、技術が海外に流出するリスクは高いです。知的財産を保護すること、海外に許諾する場合もしっかりとした契約を締結することはとても重要です。

生鮮食品は、育成者権、特許権、実用新案権、商標権、著作権など多くの知的財産権が関わっています。また先に述べた地理的表示制度(GI)も知的財産権の一つと言えます。

生産プロセス、販売・マーケティングに関わる知的財産権を理解し、必要に応じて適切に取得し、しっかりとした契約で守ることは攻守両方の意味で必要です。

実際のところ、海外でも売上をのばしているいちご「あまおう」などはしっかりとした知的財産戦略を構築しています。

必要に応じて、この分野に詳しい専門家と連携して、戦略的に取り組むことが望ましいでしょう。

ポイント5 専門家の活用

生鮮食品の輸出のためには、ブランディング、マーケティング、各国法制度、輸出入実務、市場調査、販路開拓など、海外市場に向けた特別な知識とノウハウが必要になる他、通訳や翻訳など、日本市場とは異なる事務コストも必要となります。

日本円建で購入してくれるバイヤーはほとんどなく、外国為替や決済に関しても仕組みを導入する必要があります。

「輸出をする」と心に決めるのはよいですが、こういった一連の事務コストが実際どれくらい必要になるのか、ある程度をしておくことも重要です。

幸いこの分野はJETRO等の支援も手厚く、JA全農も豊富な経験とノウハウを保有しています。さらには食品の輸出を協同で行う組合などの非営利団体や、地域の金融機関も存在しており、そういった公的に近い立場で支援をしてくれる機関と一緒に取り組むのも一つの手法と言えます。ただし支援はあくまで支援なので、実績につながるかどうかは自らの努力次第です。

支援の枠組みを活用せずに、交流会やイベントに積極的に参加することでバイヤーとの接点を持ち、自ら販路を切り開いている輸出者も少なくありません。すでに販路を保有している国内の商社と一緒に取り組んでいる生産者もいます。

このように、市場開拓の仕方には今のところセオリーはないと言えます。

一方で、対応しなければならない領域が非常に広く、気が付かないところに落とし穴が存在しているのも生産食品の輸出の特徴です。いかなる手法をとる場合でも、海外とのネットワークを持つ専門家と何かしらの形で接点を持っておくことが必要なのは間違いないと言えます。