Setting the Table 2025年11月11日

金融庁
後見制度支援預貯金・後見制度支援信託の導入状況調査

<後見制度支援信託>

  • 被後見人の金銭を信託銀行等の信託財産において管理。 
  • 日常生活に用いる資金は、信託財産から被後見人の銀行口座に定期交付。 
  • 支援信託契約時、定期交付額の設定時、信託財産からの出金時、などには家庭裁判所の指示書が必要。 

<後見制度支援預貯金>

  • 被後見人の金銭を大口預貯金口座と小口預貯金口座において管理。 
  • 日常生活に用いる資金は、大口預貯金口座から小口預貯金口座へ定期送金。 
  • 支援預貯金契約時(口座開設時)、定期送金額の設定時、大口預金口座からの出勤時などには家庭裁判所の指示書が必要。 

<制度の背景>

認知症等で意思能力を失うと本人も家族も介護費や生活費のために預貯金を引き出すことができなくなります。

この場合、法定後見制度を利用し、成年後見人をたてることで、成年後見人によって預貯金を引き出すことができるようになります。

成年後見人をたてると、第三者である成年後見人が財産を管理することになり、本人や家族のお金の使い道が制限されることになります。

そこで成年後見人による財産の不正使用を防止する観点から平成24年度に「後見制度支援信託」が創設されました。

しかしながら「後見制度支援信託」は大手信託銀行が中心となって取り扱いをするため、信託銀行の店舗立地や今までの取引経験などから利用に対して抵抗感があるという課題があり、信託銀行以外の金融機関も導入する「成年後見支援預貯金」の取扱いが開始されました。

<支援預貯金及び支援信託の導入状況>

令和7年3月末時点で、1096金融機関が導入済

  • 主要行11行、地方銀行62行、第二地方銀行36行
  • 信用金庫254金庫、信用組合101組合、労働金庫13金庫
  • 農漁協等619組合

<所感>

高齢化が進んでいる日本では、
認知症の高齢者がひとりで契約をすることが増えるため、
成年後見制度の利用が増えると予想されています。

成年後見制度は高齢者などを保護する制度ですが、
家庭裁判所の審判が必要となるため、
様々な制約があります。

アメリカでは後見の代わりの手段として信託が活用されていて、
日本でも2006年の信託法改正により
親族等が受託者となる家族信託が可能になりました。

金融機関が高齢者のために提供できるサービスが増え、
金融機関は高齢者のための重要な相談相手となっています。

一方で、金融機関は営利を目的としているため、
高齢者を守るというミッションに加えて、
そこから収益を得るという使命もあります。

そのため、高齢者を守るという観点からは
法制度がしっかりと規律することが重要です。

家族信託ではなく、成年後見制度を利用する場合でも
支援信託、支援信託などを活用することができれば、
高齢者とその家族にとっても選択肢が増え、
安心感につながります。

そして、こういった複数の制度を理解した上で、
公平な立場で個人に応じた最適な制度をアドバイスできる
専門家の役割も重要と言えます。