Setting the Table 2025年7月28日

UN Environment Programme “Transformation to a healthy food system is blocked by three key barriers”

日本では米の価格高騰が問題となっています。
米の価格低下と農家の収入安定を実現するために、
もっと農家への拠出金を出すべきだ、
という議論もあります。

このUNEPのレポートは、
こういった議論においても、
見過ごすことのできない内容かも知れません。

UNEPは1972年にストックホルムで開催された
国連人間環境会議での提案を受け発足しました。
国際的重要性を持った環境問題に各国が
協調して取り組むことが重要とされ、
7つのサブプログラム
気候変動
災害・紛争
生態系管理
環境ガバナンス
化学物質・廃棄物
資源効率性
環境レビュー
を中心に活動を行っています。

世界中で8億人以上が飢餓に苦しむ一方で
食品の30%が廃棄され、
五人に一人が早すぎる死を迎えている。
このUNEPのレポートでは、
現在の工業化されたアグリビジネスが
根幹の問題として存在しているとしています。

健康なフードシステムへの移行を妨げるバリアとして、
The cheaper food paradigm
Market concentration
Investment path dependencies
の3つが挙げられています。

the cheaper food paradigm
(より安い食品のための枠組み)

地球環境やヒトの健康にとって
良い食品はコストが高くつきます。
それに対して生産者には
マーケットの論理から
「安く提供する」ことが求められています。
そしてこの枠組みは、以下の2つのバリアの
要素ともなっています。

market concentration
(市場の統合)

一部の民間セクターに市場が支配されると、
競争がなくなり、変化やイノベーションは忌避され、
その結果、農業自身の働きや収入には
上限が設けられることになります。

investment path dependencies
(過去のしがらみに縛られる)

過去80年以上にわたって、
食品ビジネスは生産性と売上を重視してきました。
環境やその他持続可能性への重要なコストが必要でありながらも、
大企業の提供する種の開発、農薬及びデジタル技術への
農家の依存度は高まっています。

このレポートでは、消費者側のアクションが必要で、
フードシステムはテクノロジーにより生産を最適化でき、
より多様で知識集約型に変わることができるとしています。

このことは、食品に限らず、持続可能性のために共通のテーマと思います。
市場は需要と供給によって形成されるので、
需要側が高くても環境に優しい製品を選ぶようになれば、
供給側の構造は変わると思いますが、
果たしてその移行は市場を前提としたままで実現するのか?

インセンティブや補助金のような
戦術的なものよりも
もっと上位概念での問題提起がなされているように感じます。