Setting the Table 2025年7月29日

厚生労働省 「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ」

人口とは何か?
という一つの大きなテーマがあります。

日本の人口に外国人を含めるのか?
人の数は常に変化している中で、どのタイミングで人口を算出するのか?
戸籍や住民票などデータは存在していますが、
人口を算出して、将来を見通すことはとても難しい作業と思います。

人口は総務省や厚生労働省によって調査されています。
国立社会保障・人口問題研究所によって、将来推計人口が公表されています。
こういった専門家によって提供されたデータは、人口に関する将来像を見通す上で、
かなり確度の高い内容となっています。

人口が大きく伸びている時に、
すでに少子高齢化の未来は確実なものとして把握され、
どのタイミングで超高齢社会になり、
どのタイミングで人口減少社会になるか、
正確に予測されていました。

しかしながら、人口増加を前提とした社会保障の設計は、
超高齢社会になったからといって、
その時代に応じて社会保障が供出され、
それぞれの時代ごとにその制度に支えられる方々がいるので、
その時々に社会に応じた制度設計に
簡単に変更することはできません。

今の社会保障制度は、人口が増加し続けているときに
設計されたもののままとなっています。

「誰も切り捨てない」ことが
今の日本の制度設計においては重視されています。
緻密に計算された確度の高い人口推計に基づき、
将来経済的または社会的に支援が必要な人々の状況を予測し、
充実した支援を提供するための制度が設計されています。

このことは、たとえ人口減少社会になっても、
変わることはないでしょう。

そのため、制度をドラスティックに変えるのではなく、
支援の枠組みをすこしづつ地域に移し、
地方に応じて柔軟な制度設計ができるようになっていくと思います。
そしてそのことは地方も負担を増やすことになるので、
民間による新たな地域サービスのニーズが高まっています。

「地域住民を包括的に支えるための包括的支援体制」

この確立のためには地方行政と連携して取り組むことができる
民間事業者と、そこで働く人々の活躍が不可欠です。

福祉は、それを担う人材が不足しているから外国人人材を活用する、
という文脈にはならないと思います。
また収益を追求する企業のように、
即戦力を雇って、役割がなくなったらリストラする、
という構造み成り立ちません。

福祉はそこで働く人たちが社会的意義を理解して、意欲をもって
取り組んでくださるから既存の制度が成り立っています。

このレポートにある、人材育成、職場の魅力発信、職場環境改善・生産性向上といった内容には共感できます。

人口動態という大きなテーマから目をそらさず、
将来起こりうる大きな変化を直視した上で、
既存の制度設計をドラスティックに変化するのではなく、
福祉を担う事業者、かかわる人々が
今よりもっと働き甲斐を持つことができ、
地域で支え合って実現する制度を目指そうとしていることを感じます。

地方行政及び地域の福祉サービス提供事業者の方々にとって
とても意義のあるレポート内容であると思います。