World Economic Forum
The Future of Materials Systems: Cooperation Opportunities in a Multipolar World
ホルムズ海峡が海上輸送の要衝であることは誰でも知っている事実で、この海峡が閉鎖されることのリスクは何十年も前から政府だけでなく企業の間でも十分認識されていました。
それにも関わらず、実施に封鎖の危機に直面すると、経済的なインパクトは非常に大きいことを、今私たちは身をもって体験しています。
World Economic Forumが多極化して、分断の進み、技術革新のスピードが速く、環境負荷の高い世界の中で描く原料供給システムの展望・シナリオについて
ホワイトペーパーを公表しています。
序文を環境省の中村氏が共同で執筆されている他、東京大学の石井特任教授をはじめとした日本からの知識人の方々もこのホワイトペーパーの完成に寄与されているようです。
原材料の供給が滞った時に、私たちの生活に多大な影響を及ぼすのは、オイル由来の有機化合物やレアメタルだけではありません。
製鉄には石炭、コークス、鉄鉱石が必要です。
セメントの主原料である石灰石は国内でまかなうことができますが、酸化鉄も必要です。
自動車のような主要な輸出産業の部材、建築といった産業で大量に使う部材、
衣類や印刷物の着色剤、医薬品、など、あらゆる産業で海外からの原材料調達に依存しています。
このホワイトペーパーによると、2024に輸出入が規制された重要部材の数が82だったのに対し、2025年は226にのぼったとのこと。
これらの規制の根底には、覇権争いではなく、資源の枯渇といった人類共通の差し迫った課題もあります。
その一方で、原料に対する需要は、増え続けています。
このホワイトペーパーは企業の現状認識を把握した上で、多国間での協調の枠組みを構築するというアプローチよりも、利害を一致する当事者がつながりアジャイル的なアプローチで、全体最適を実現していくという内容を提供しています。
確かに、このアプローチは非常に示唆に富んでいます。
例えば、地球環境保護はすべての国が利害が一致しており、それがためにパリ協定が実現しましたが、その一方で、それぞれの国の中で反対する人たちもいるので、政権が交代すればリーダーシップを発揮した国が脱退していまうということも起こり得ます。
歴史を見ても、そして別の産業、たとえば国際金融システムなどをとっても、同じことが言えると思います。
こういった点について、このホワイトペーパーでは、原料供給システムにフォーカスして、深堀をしています。
データの透明性、国際標準、市場での協力の3点を主要な領域として、具体的な内容を提供しています。
アプローチの仕方としても非常に勉強になりますが、政治まかせにするのではなく、民間の立場でも、アクションをしていかなければと、背筋が伸びる思いがする内容となっています。