Setting the Table 2026年7月15日

執筆者:

カテゴリ:

農林水産省
農林水産研究イノベーション戦略2026

令和8年3月27日に閣議決定された「科学技術・イノベーション基本計画」で農業・林業・水産関連技術が我が国の総合的な安全保障や経済・社会・科学の発展を支える振興・基盤技術領域として位置付けられました。

また、同計画では農林水産分野における新品種の開発・育種・ゲノム編集技術といったバイオ関連技術が国家戦略技術の一つとして集中投資の対象となっています。

さらに、日本成長戦略会議で定められた17の戦略分野に一つにフードテック分野があり、植物工場、陸上養殖、食品機械、新規食品の4領域が挙げられています。

本年の農林水産研究イノベーション戦略はより大きな枠組みからも注目を集める内容となっています。

【農林水産研究イノベーション戦略2025の基本的考え方】

  • 小麦・大豆等の国内生産の増大と化学肥料や化学農薬の使用低減 
  • 家畜排せつ物由来の堆肥や下水汚泥資源等ので化学肥料を代替
  • 輸出拡大に向けた輸出産地の形成、低コストまたは高付加価値な農林水産物・食品の生産・製造、知的財産の保護・活用
  • スマート農業技術に適した生産方式への転換やサービス事業者の育成・確保等による中山間地域等へのスマート農業技術の導入の推進、特に必要性が高いと認められるスマート農業技術等の開発 
  • 今後の農業を支える技術としてのヒューマノイド
  • 高温障害 や病害虫等による品質や収量の低下の課題に対応した新品種等の育成・導入 
  • 食品産業の農業との協調・連携、原材料の国産化、フードテック等新技術の活用

【農林水産研究イノベーション戦略2026の概要】

  • 技術が政策を牽引し、政策や食料・農林水産分野の産業構造の転換が図られることを目指し、研究開発により実現を目指すビジョンを描き、バックキャストする形で先端的な技術を開発・普及することが重要。
  • イノベーションを支える研究環境の充実が不可欠であり、農林水産分野においても、新たな分野を切り開くスタートアップ企業とのオープンイノベーションの取組の加速や基礎・基盤研究を担う各大学との連携強化が重要 
  • スマート農業技術は、農作業の効率化・省力化、農畜産物の高付加価値化、農業の経営管理の合理化による生産性向上を支える技術として開発を急ぐ必要
  • 品目毎の育種目標等を「食料の安定供給に向けた優良品種育成方針」として見直すとともに高温耐性等の優れた形質を 有し広域で利用可能な品種の育成・普及を図るための気候変動等対応品種法案を本年4 月に国会に提出
  • カーボンニュートラル、化学農薬や化学肥料の使用量低減等の数値目標の達成に向け、着実に研究開発を推進 
  • 全国で収集されたデータを統合してビッグデータとして整備するとともに、これを利用する APIを開発して公開するなど情報基盤を整備し、収集したデータの利活用を促進する。 
  • 国際的なバイオ産業市場の獲得競争が激化する中で、我が国でも関係府省が連携し、民間企業との協働により、新技術を活用した新たなバイオ産業を創出・育成し、農林水産業・食品産業の裾野を拡大 
  • 森林・林業・木材産業の好循環による「森の国・木の街」の実現に向け、森林資源の循環利用や多様で健全な森林づくりを一層推進
  • 平成22年と同水準の漁獲量444 万トンの回復のため、水産研究・技術開発戦略等に基づき技術開発等を推進。特に陸上養殖に資する技術開発については、重点的な取組み。
  • 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター(国際農研)の持つ国際的な研究ネットワークや知見等を活用した国際研究の推進 
  • 農林水産業を支える国立研究開発法人の機能強化
  • スタートアップの推進
  • オープンイノベーション(産学連携)の推進
  • 先端技術の社会受容性の向上
  • 知的財産マネジメントの強化
  • 復旧・復興に資する研究開発の推進

<所感>

研究開発という分野に関しては、どの産業も研究者同士は国際的なネットワークを持っており、常にグローバル水準での取り組みを行っていると思います。

一方で産業としては、輸出、加工貿易など、常にグローバルマーケットとの接点をもってきた二次産業や、インターネットの普及で国境を越えやすくなった三次産業と比べて、一次産業は高い比率で国内市場を前提としてきました。

研究はグローバルに、産業はドメスティックに、という構造の中で、食料自給率はどんどん下がってきたので、日本が持つ素晴らしい技術が一次産業の分野で活用される機会は必然的に減っていくことになっていたと感じます。

今回、食品の輸出、そして日本独自の農林水産技術の開発に大きく舵をとったことは、とても重要な決断だと感じます。

その一方で、かつてこういったダイナミックな転換を支えてきた日本の商社や金融のビジネスモデルも今は変わってきています。

政府ができることは、実質的には補助することと褒めることで、実務を担うのは、常に民間です。かつての商社や銀行のような市場を媒介する存在に期待が難しい今、産学官連携をどのように進めていくのか、その具体像が欲しいところです。

もしかしたらその答えが、この戦略に記載されているスタートアップのオープンイノベーションかも知れません。若い力にますます期待がかかります。