総務省
社会課題の解決に向けた没入型技術導入の手引き2026
仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)がエンタメ分野に限らず、製造、建設・不動産、運輸、卸売・小売、医療・福祉、教育・学習支援、自治体等での活用事例が出ており、社会的意義への期待が高まっているとして、導入の手引きが公表されています。
これらの没入型技術は、業務安全性の向上、健康の向上、生産性・品質の向上、研修の高度化・効率化、遠隔作業支援・ナビゲーション、観光・地域活性化などの課題に対して活かすことができるとして、そのメリットが使用のポイントと合わせて利活用例が紹介されています。
利活用事例について、一部をピックアップさせていただきます。
【建設・不動産】
- 主に建物オーナー・設計担当者・施工現場作業員を利用者として、設計や建設現場においてBIMデータを活用した、MRによる空間確認・作業支援を提供する仕組みを導入(三建設備工業)
- 主に建築確認検査機関・設計者・施工者を利用者に、BIMと点群データをメタバース上で統合し、遠隔から建物検査を行える「メタバース検査システム」を開発(清水建設)
- 主に賃貸マンションやテナントビル等の建築主・不動産オーナーを利用者として、建物計画の検討段階から没入型VRによる空間体験型のプレゼンテーションを顧客に提供する仕組みを導入(杉本組・福井コンピュータアーキテクト)
- 主に山岳トンネル工事の現場技術者・地質専門家を利用者として、山の中にトンネルを掘る工事で、掘り進んだ先端の岩盤(切羽)を3DスキャナとVRでそのまま再現し、安全に詳細確認できる仕組みを導入(大成建設)
- 主に戸建住宅の購入を検討する顧客を利用者として、営業商談の場で提案プランを高精細なVR空間で体験できるVRプレゼンゲートウェイの仕組みを導入(大和ハウス工業)
- 主に施工現場に頻繁に足を運ぶ社員や、現場状況の把握が求められる発注者・管理職・工事現場近隣住民を利用者として空撮映像と3Dモデルを照合するMR施工支援システムを導入(西松建設)
【製造】
- 主に製造現場の作業者や設計者を利用者として、溶接・組立等の生産準備や作業指示、設計検討・顧客説明にVR/MR等の没入型技術を活用した3Dデータ活用基盤を提供する仕組みを導入(川崎重工業)
- 主にダイキン工業の新人サービスエンジニアを利用者として、空調機点検、修理スキルを習得するためのバーチャルトレーニングセンター(「VR点検トレーニング」)を導入(ダイキン工業・日本電気)
- 主に工場内で自動車バンパー等を出庫するピッキング作業者を利用者として、Dynabook製ARスマートグラス「AR100」を活用したピックング支援システムを導入(Dynabook)
- 貨物輸送向けの航空機を開発・製造する企業NATILUSは、主に自社設計・製造エンジニアおよび意思決定の経営層を利用者として、シーメンス社「NX Immersive Designer」とソニー製造のXRヘッドマウントディスプレイ「SRH-S1」を組み合わせた没入型設計環境を導入(NATILUS・Siemens・ソニー)
【インフラ】
- 主に一般利用者・地域住民を対象として、リアルで多様な機能や社会的機能を持つ「駅」を拡張・再現した独自のバーチャル大阪駅、バーチャル広島駅を構築(西日本旅客鉄道)
- 主に鉄道車両の保守・保全業務に従事する現場担当者を利用者として、車両メタバース空間を開発し、AIエージェント「Naivy」による技術支援・ナレッジ提供を行う仕組みを導入(東武鉄道・日立製作所)
【小売】
- 主に地方自治体や観光・文化団体やメタバース上の生活者・一般ユーザーを利用者として、VRソーシャルプラットフォーム「VRChat」上に伝統芸能や観光資源を再現する「メタバース事業」を展開(大丸松坂屋百貨店)
【医療・福祉】
- 主に小児入院患者とその家族を利用者として、メタバース空間上で病院を再現したバーチャルホスピタルと面会アプリを通じて、遠隔からでもぬくもりのある面会体験を提供する仕組みを導入(順天堂大学)
その他、教育や自治体など多数の事例が紹介されていますが、割愛させていただきます。
<所感>
これまでICT分野では、ERP、SaaS、IoT含めて、汎用性の高いサービスが、非常に早いスピードで市場に浸透してきました。
それに対して、没入型技術は、個別のニーズに対して細かく対応する形でサービス展開がされているように感じます。
この分野では、日本の製造業が培ってきた「すり合わせ」の技術が生きるのではないかと思います。
例えば製造業は、それぞれの企業が独自に生産技術を保有しています。こういった生産技術について没入型技術は様々な応用の機械を提供してくれるように感じます。
また、リサイクル含めた3Rという社会的要請がありますが、3Rにも没入型技術が役に立つように感じます。
ユニークな発想で、没入型技術を利用した「すり合わせ」に基づく新しいサービスを提供して、各業種、各企業の細かいニーズに対応できる企業が、これから日本で生まれてくることを期待したいです。