Setting the Table 2026年7月23日

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環境省
ネイチャーファイナンス実践ガイドライン(案)

2025年7月に公表されたネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップでは、「ネイチャーファイナンスの拡大・質向上」が掲げられています。

投資家・金融機関が自然資本への考慮を、投融資判断に組み込む上での実践ガイドラインについてパブリックコメントが実施されています。

生物多様性の崩壊が社会経済システムに与える影響の大きさについても言及されています。

例えば、

  • 原材料の収量低下や品質劣化による価格変動、土地劣化がもたらす自然災害の増加による事業継続性の低下などの様々な事業リスク。バリューチェーンの広範囲に及び得るため、事業が自然と直接の接点を持っていない企業も調達リスクにさらされる
  • IMF Climate Staff Noteによると、自然資本の損失が経済・金融に与えるリスクは、アマゾンの熱帯雨林の崩壊などティッピング・ポイント到来のおそれがあることを勘案すると、気候変動よりも緊急性が高いとされる
  • TNFDによると、生態系サービスの広範な喪失は、食料・水・医薬品・インフラ等の基礎資産価値を毀損し、金融市場の安定性や信用供与の縮小、資産評価の急変を招く
  • NGFSは、生物多様性の損失を含む自然関連リスクが重大なマクロ経済的影響を及ぼす可能性があることを指摘する。
  • 2021年の世界銀行レポートによると、花粉媒介、海洋漁業による食料供給、原生林からの木材供給といった特定のサービスの崩壊は、世界のGDPに大きな減少をもたらし、控えめに見積もったとしても、2030年には2.7兆ドルの損失になる可能性がある。

その上で、このガイダンスではファイナンスがこれらのリスクの低減に寄与できることを述べています

  • エンゲージメントや投融資の実行等を通じて事業内容の改善、ネイチャーポジティブ経営への移行を促すことで、財務リスクの低減が図られ、結果としてリターンの継続性確保につながる
  • 金融サービスは、投融資先企業の成長が自組織の成長の原資となるビジネスモデルであり、こうした自然資本を取り巻くビジネスの転換期におけるリスクと機会の両面を捉え、投融資プロセスに自然資本への考慮を組み込んでいくことが、投資家・金融機関等の持続的な成長基盤の強化に資するものと考えられる。
  • Nature4Climateの2022年の分析では、Nature Techの市場は2030年には2022年時点の約20億規模から、3倍の約60億ドル規模に成長するという見込みが示された。

その上で、ネイチャーファイナンスの実戦の要点を示しています。

【ネイチャーポジティブファイナンス】

自然資本に対して、現状維持と比較して測定可能なポジティブ成果を企図するファイナンスで、以下の3つの要件を全て満たす必要がある。

  • 自然に対して実質的な貢献をもたらすこと
  • 期待されるプラスの成果が測定可能であること
  • 重大な環境リスクや悪影響をもたらすことは想定されていないこと

【ネイチャー主流化ファイナンス】

ネイチャーポジティブ目標を達成するための活動に向けたより広範な経済的移行を可能にするファイナンス。例えば融資に際した事業性評価や投資判断に自然資本の観点をインテグレートすることで、ネイチャーポジティブ目標に貢献する活動を金融面で支援することが含まれる。

【複雑性・段階的アプローチ】

  • 生物多様性・自然資本は、気候変動等とは異なり、企業活動や金融活動との依存関係・影響が可視化されにくく、空間的・時間的スケールも多様である。このため、単一指標による把握には限界があり、複数の指標を組み合わせたダッシュボード的手法や、フットプリント等の手法を活用した多面的な評価を行うことが望ましい。
  • 自然関連データは不完全であることが多く、その不確実性を前提としつつ、広域的データと現地・地域レベルの情報を組み合わせて分析・評価を行うことが重要
  • 当初は部分的であっても徐々に精度を高めていくような長期目線での段階的なアプローチに基づいた開示情報を求めることが望ましい

【ネクサス(相互依存性)】

  • 生物多様性の損失は、気候変動、水資源、食料安全保障、健康等の課題と相互に関連し、単独の課題として対応することは効果的ではない
  • 気候変動対策等との整合性や共便益を意識しつつ、自然資本全体への影響を総合的に捉え、システムレベルでのリスクと機会を評価する視点が重要である
  • 気候変動や資源循環に貢献するファイナンスもネイチャーファイナンスとなり得るが、総合的なアプローチでネイチャーファイナンスに取り組む際には、自然資本に対する接点やシナジーを明確にすることが重要である。

【企業の事業活動を支えるための投融資の実行の取組手法例】

  • 脆弱な生態系やロケーションへの影響が大きい案件に対しては、デュー・デリジェンスを強化し、負の影響への適切な緩和策策定を融資条件として明文化する
  • 再生型農業・海洋保全・生物多様性回復など自然にポジティブな取組に対し、KPI達成と連動したサステナビリティ・リンク・ローンや自然資本保全に関するインパクトファイナンスを提供する
  • 自然資本保全・回復に特化した投資ファンド(生物多様性債券ファンド、自然資本ファンド等)を組成する
  • NbS等の自然関連テクノロジー企業へ出資し、ビジネスのスケールアップを支援することで間接的に広域の自然資本保全を促進する

<所感>

今は金利のある世界に戻っています。融資を提供する側にとっては、様々な選択肢が用意できるようになっています。

金融機関が実体経済に対して、様々なポジティブな影響を得た得ることができる環境が整うと同時に、長期のプロジェクト、大型のプロジェクトだけでなく、地域密着の中小企業に対しても、金融商品のメリットが伝わりやすくなっています。

特にサステナビリティ関連の投融資では、地方銀行や信用金庫が、自治体と連携して、様々な役割を果たしています。

今回のガイダンスは、特に、こういった地方銀行や信用金庫にとって参考になる内容であると感じます。

ネイチャーポジティブへの移行を事業ドメインに取り込むことができれば、地域金融機関との関係性を強化できる可能性があります。

日本の産業構造の強みは、地域に密着した中堅・中小企業の存在です。企業の数で99%以上を占める、裾野の広い中小企業で、ネイチャーポジティブへの移行が進めば、日本全体でネイチャーポジティブへの取組は大きく広がると思います。