総務省
AXを通じた強い経済と持続可能な地域社会の実現
総務省重点施策2027として、AXを通じた強い経済と持続可能な地域社会の実現が公表されています。
AXとはAI Transformationの略で「あらゆる組織で、AIを前提として意思決定や業務の進め方を根底から見直すこと」とのこと。
Digital TransformationとしてDXが叫ばれたのが2020年頃。
DXでhアナログプロセスをデジタルに置き換えて効率化するというだけでなく、データを活用することでビジネスモデルそものを転換することが唱えられました。
実際にこの5年で消費生活は大きく変わりました。電子決済比率は高まり、公共機関の手続きも判子が不要でマイナンバーカードが幅広く活用できるようになりました。
データが静的ではなく動的に活用されることで、最適化が実現され、ダイナミックプライシングなどが各所で導入されました。
AIの目覚ましい進化から、おそらくAXはDXと比べても、より速いスピードで、より大きな変化を導くのではないかと感じます。
米中がAI覇権争いをしている一方で、日本このテーマでいかに独自のポジションを確立していくか、重要な論点と言えます。
政府がAXでどのようなビジョンを描いているのか、について知るためにこの重点施策は参考になります。
以下、施策を抜粋して列挙します。
- 大容量・低遅延・低消費電力に優れたオール光ネットワーク(APN)の研究開発支援・社会実装の推進
- ワット・ビット連携を核としたDC、5G、光ファイバ等の通信インフラの全国整備
- 海底ケーブルの自律的な敷設・保守能力、防護・監督体制の強化及び多ルート化の推進
- 次世代ワイヤレス(Beyond5G(6G)、衛星光通信等)の実現に向けた電波の有効利用・研究開発・整備等の推進
- 量子通信・ネットワークに関する研究開発・社会実装の推進
- 情報通信領域におけるバーティカルAIやAIの信頼性を評価する能動的評価基盤の構築をはじめとするAIの開発・利活用の促進
- 情報通信業界の持続的発展を支える環境整備や担い手育成の推進
- 中堅・中核企業から地域企業に至るまで、AI導入を一気呵成に進める地域AXの推進
- 地域交通の確保等に資する自動運転を支える通信インフラの整備・拡充
- ローカルスタートアップの支援による地域経済循環の創出
- 進化した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の下、安全で信頼性が高く、強靭なデジタルインフラの整備を推進する「FOIPデジタル回廊構想」の実現および我が国のAIの海外展開の推進
- APN(光伝送装置の大容量化等)、次世代ワイヤレス(オープンRAN等)等の情報通信技術の国際標準化の推進
- ドラマなど実写コンテンツの海外向け大規模作品制作支援と日系配信プラットフォームの海外展開支援
- 郵便の海外展開支援・国際連携の推進
- 最新の技術動向等を踏まえたAI事業者ガイドラインの更新及び幅広い企業等への周知浸透による国内のAIガバナンスの確保
- 広島AIプロセスを軸としたAIグローバル・ガバナンスの構築
- インターネット上の偽・誤情報、違法・有害情報の流通・拡散に対する総合的な対策の推進
- 電気通信サービスの不適正利用対策等の推進
- 情報空間の多様化に対応した今後の放送事業の在り方の検討
- AIを活用した防御技術の開発や政府端末等による脅威情報の収集等を通じたサイバー対策能力確保のためのエコシステムの形成
- 高性能AIの悪用によるサイバー攻撃の脅威等を踏まえたサイバーセキュリティ人材の育成
- IoT機器を悪用したサイバー攻撃等への対策の強化
- AI・量子コンピュータ時代に対応したデータの安全性・信頼性確保
- サプライチェーン・リスク対策等を通じた地方公共団体のサイバーセキュリティ対策の抜本的強化
- ふるさと住民登録制度いよる関係人口の可視化・地域の担い手確保
- 地域おこし協力隊等による地域の担い手確保及び地域運営組織(RMO)による持続可能な地域づくりの推進
- 行政相談委員、民生員、保護司、人権擁護委員等の連携による地域課題の解決
- 過疎対策の推進
- 自治体AX/DXによる行政サービスの効率化の促進
- 自治体情報システムの標準化の推進
- マイナンバーカード等を円滑に取得、更新できる環境整備
- 都道府県と市町村におけるAX/DX推進耐性構築とデジタル人材の確保・育成
- 地方公共団体間の連携や広域ソリューション連携の強化
- 地方の一般財源総額の確保と財政健全化等
- 補正予算依存からの脱去悪などの国の予算編成の転換への対応
- 基地交付金・調整交付金の増額確保
- 東日本大震災に係る地方の復旧・復興事業等の事業費及び財源の確実な確保
- AI・ロボット・ドローン等の新技術の活用等による消防AX/DXの推進
- CBRNE災害への対応能力の強化
- 林野火災等の大規模災害に備えた消防防災力の充実強化
- 緊急消防隊・消防団等の充実強化
- 携帯電話基地局やケーブルテレビ等の耐災害性強化による通信・放送インフラの強靭化・冗長性の確保、官民連携による通信復旧耐性の整備
- Lアラートによる災害情報の確実な伝達の推進
- 特別行政相談の大規模広域災害時の対応力強化
- 行政相談業務におけるAI等デジタル技術の活用
- デジタルとアナログのタッチポイントの機能を見据えた「コミュニティ・ハブ」としての郵便局の活用推進など、郵便局ネットワーク等の活用による地域住民の生活の支援の拡大
- 行政運営におけるAI利活用に対応した行政通則法的観点のガイドライン策定
- 公務の担い手不足・行政サービスの質向上に対応するためのAX推進による行政運営の改善等
- 政策効果の把握・分析(EBPM)の推進による各府省の政策立案等の支援
- 各府省の行政運営の改善に関する調査の充実・強化
- 官民データやデジタル技術の積極的活用による高品質・効率的な公的統計の作成・提供
- 令和9年就業構造基本調査など社会・経済実態の把握に資する統計調査等の実施
- 主権者教育の推進と投票しやすい環境の一層の整備
- 政治資金終始報告書データベースの構築
- 諸外国の選挙制度等の調査研究
- 受給者の生活を支える恩給の確実な支給
生成AI技術やフィジカルAIで世界をリードするのではなく、日本独自のポジションとして、AIを支えるインフラとアプリケーションを強固にしていこうという大きな方向性を感じます。
インフラ面では、様々な産業で日本をカバーしているメンテナンス網と、それらを支える地域企業の技術力は世界に類をみないものがあると思います。
重点施策には技術的に難易度の高い項目が並んでいますが、これらを実現できる企業とそれをささえる下請け構造が存在していることが日本の大きな強みと思います。
防災ではAIの活用で、かなり強力なソリューションが実現できるのでないかと思います。
地球環境の変化により、今後どのような問題が発生するのか、今や科学的には予想できないレベルに来ています。
災害時の自衛隊や消防の活躍はめざましく、自治体の動きも災害の度に統制が取れて迅速になり、医療機関、地域支援機関、ボランティアの連携の幅も広がっていると思います。
これまで人間の力で蓄積されてきた経験とノウハウは、かなりのものであると思います。
災害時に必要なのはリーダーシップですが、災害時に歩調を合わせるのは簡単ではありません。
AIを活用することで、災害時の一つ一つの対応がより効果的になるならば、とても力づよいツールになると思います。
一方で、全体として国の支援の限界も感じます。
日本企業がAXで海外の企業との競争に勝てるかどうかは、各企業の努力にかかっていますが、AXに大きな投資ができる企業は極めて限られており、AI人材も日本は決して豊富とは言えません。
このままではもしかしたら、政府が構築したAIインフラを有効に活用するのは外資企業になるかもしれません。
国の施策と幅広い裾野の日本企業が、どのように歩調を合わせてAXに取り組んでいくか、ということも今後の重要なテーマになると思います。