Setting the Table 2026年5月15日

内閣官房
国土強靭化年次計画2026

昨日防災庁設置法案が衆議院の委員会で可決されました。

衆議院本会議と参議院での可決を経て、今年度中の施行を目指しており、2026年11月の設置を目指すと公表しているメディアもあります。

防災庁は内閣に設置され、内閣補助事務と分担管理事務を担うこととなっています。

【内閣補助事務】

防災の施策に関する基本的な方針及び計画、大規模な災害への対処に関する企画立案・総合調整、関係行政機関が講ずる施策の実施推進等

【分担管理事務】

  • 中央防災会議、災害対策本部等の防災に関する組織の設置及び運営
  • 国・地方公共団体・民間事業者等が防災計画等に基づき実施する事前防災の推進
  • 被災者や被災自治体の支援
  • 千島海溝列島、日本海溝地震、首都直下地震、南海トラフ地震等への対策

防災大臣は関係行政機関に対する勧告権を持つので、中央集権的な体制で防災に向けての取組が開始されることになります。

また地方機関として防災局も置かれるとのこと。

最近ではデジタル庁が設置され各省庁の管轄分野にDXの横串で横断的に取り組むことで各省庁間の新たな連携を生み出していますが、防災庁は防災に向けての権限を内閣に集中させることで、各行政機関の取組を推進させることになると感じます。

防災については、各法令に基づく各行政機関での取組に加えて、国土強靭化基本法に基づく国土強靭化基本計画によって、政府主導でも取組みがなされてきました。

今後の防災庁の立ち位置を知る上でも、本年度の国土強靭化年度計画2026(素案)の内容は参考になると思います。
国土強靭化年度計画では35の「起きてはならない最悪の事態」に対して各施策を推進します。

<起きてはならない最悪の事態>

  1. 大規模地震に伴う、住宅・建物・不特定多数が集まる施設等の複合的・大規模倒壊による多数の死傷者の発生
  2. 地震に伴う密集市街地等の大規模火災の発生による多数の死傷者の発生
  3. 広域にわたる大規模津波による多数の死傷者の発生
  4. 突発的又は広域的な洪水・高潮による多数の死傷者の発生
  5. 大規模な土砂災害等による多数の死傷者の発生
  6. 火山噴火や火山噴出物の流出等による多数の死者数の発生
  7. 暴風雪や豪雪等に伴う多数の死傷者の発生
  8. 自衛隊、警察、消防、海保等の被災等による救助・救急活動等の絶対的不足
  9. 医療施設及び関係者の絶対的不足・被災、支援ルートの途絶、エネルギー供給の途絶による医療機能の麻痺
  10. 劣悪な避難生活環境、不十分な健康管理がもたらす、多数の被災者の健康・心理状態の悪化による死者の発生
  11. 被災地での食料・飲料水・電力・燃料等、生命に関わる物資・エネルギー供給の停止
  12. 想定を超える大量の帰宅困難者の発生による混乱
  13. 多数かつ長期にわたる孤立地域等の同時発生
  14. 大規模な自然災害と感染症との同時発生
  15. 被災による司法機能、警察機能の大幅な低下による治安の悪化、社会の混乱
  16. 首都圏での中央省庁機能の機能不全
  17. 地方行政機関の職員・施設等の被災による機能の大幅な低下
  18. サプライチェーンの寸断・一極集中等による企業の生産力・経営執行力低下による国際競争力の低下
  19. コンビナート・高圧ガス施設等の重要な産業施設の火災、爆発に伴う有害物資等の大規模拡散・流出
  20. 海上輸送の機能停止による海外貿易、複数空港の同時被災による国際航空輸送への甚大な被害
  21. 金融サービス・郵便等の機能停止による国民生活・商取引等への甚大な影響
  22. 食料の安定供給の停滞に伴う、国民生活・社会経済活動への甚大な影響
  23. 異常渇水等による用水供給途絶に伴う、国民生活・社会経済活動への甚大な影響
  24. 農地・森林や生態系等の被害に伴う国土の荒廃・多面的機能の低下
  25. テレビ・ラジオ放送の中断や通信インフラの障害により、インターネット・SNSなど災害時に活用する情報サービスが機能停止し、情報の収集・伝達ができず避難行動や救助・支援が遅れる事態
  26. 電力供給ネットワークの長期間・大規模にわたる機能の停止
  27. 都市ガス供給・石油・LPガス等の燃料供給施設等の長期間にわたる機能の停止
  28. 上下水道施設の長期間にわたる機能停止
  29. 太平洋ベルト地帯の幹線道路や新幹線が分断するなど、基幹的陸上海上航空交通ネットワークの機能停止による物流・人流への甚大な影響
  30. 自然災害後の地域のよりよい復興に向けた事前復興ビジョンや地域合意の欠如等により、復興が大幅に遅れ地域が衰退する事態
  31. 災害対応・復旧復興を支える人材等の不足等により復興できなくなる事態
  32. 大量の発生する災害廃棄物の処理の停滞により復興が大幅に遅れる事態
  33. 事業用地の確保、仮設住宅・仮店舗・仮事務所等の整備が進まず復興が大幅に遅れる事態
  34. 貴重な文化財や環境的資産の喪失、地域コミュニティの崩壊等による有形・無形の文化の衰退・損失
  35. 国際的風評被害や信用不安、生産力の回復遅れ、大量の失業・倒産等による国家経済等への甚大な影響

<所感>

起きてはならない最悪の事態が35も存在していることにまず驚きますが、どれひとつとっても、国民一人一人に甚大な影響を及ぼすことになることは明らかです。

かつ、実際にどれか一つが起こった場合、他の事態も起こっていることになると思います。

国土強靭化年次計画2026素案では、それぞれの事態に各省庁の役割を紐づけて、対策や体制の確立等を定めています。

防災庁は、これらの中で防災における省庁の役割を統括していくことになると思われ、そういう意味では防災庁の設置により、中央省庁内でも重層的かつ危機管理に適した体制になると感じます。

一方で、35の施策グループの定める主要施策は一つ一つが一朝一夕でできる内容ではありません。
今後、「防災」をキーワードに、民間企業や地域団体など多数の関係機関を巻き込んだ動きが活性化することを望みます。