Setting the Table 2026年6月3日

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経済産業省
蓄電池・電源産業戦略

2022年8月に策定された「蓄電池産業戦略」が「蓄電池・電源産業戦略」として改訂されています。

EVなどの車載用、データセンターなどの定置用を中心とした蓄電池需要が今後も増大する一方で国内外で電池セルのコスト低減が進むことが見込まれており、大規模投資によるスケールアップや製造技術の強化によるコスト低減を促進するとしています。

これまで太陽光発電、液晶、半導体、LEDといった分野では、日本は研究・開発・生産技術で世界をリードしながらも、他国企業がスケールメリットを追求した大規模投資でコスト競争力を身につけ、シェアを奪われるという経験をしてきました。

一方で、セラミックなど素材技術における日本の優位性は変わっていません。蓄電池で使われる電極や電解液などの素材でも日本は高い優位性を維持し続けています。

今回、この日本が技術的優位性を持つ蓄電池について、政府として液晶や半導体同様、スケールアップ時に他国にシェアを奪われる危機感を抱いていることを感じます。

蓄電池・電源産業戦略には、市場全体を俯瞰するのに有益な情報がたくさん含まれているので一部を引用させていただきます。

【市場見通し】

  • リチウムイオン電池(LIB)の世界市場は2025年の23兆円から35年に46兆円、40年に50兆円と約2.4倍の規模に成長する見込み
  • 中国市場では、将来の車載用液型LIBの需要規模を大幅に上回る生産能力が存在

【高容量と高出力】

  • エネルギー密度とパワー密度にはトレードオフの関係がある
  • BEV(バッテリー式電気自動車)やHAPS(空飛ぶ基地局)では高容量電池商品群
  • AIデータセンターやスーパーキャパシタ等では高出力電池商品群

【投資負担】

  • 蓄電池工場等の投資は他産業の投資よりも必要な資金が多く、投資開始から生産開始まで4年程度の期間を要する
  • 鉱物資源や部素材の調達にもリードタイムが必要
  • 特に鉱物の生産に至るまでに10年〜20年程度の期間を要する

【自動運転・ロボタクシー】

  • 自動運転の高度化に伴い、センサー増加、データの処理等による電気使用量・処理頻度が増大
  • 高エネルギー密度かつ高速充放電可能なサイクル寿命が求められる
  • バックアップ用途での需要も増加見込み

【医療介護・ヘルスケア】

  • ウェアラブル・埋込み型機器が非接触診断を通じた医療の効率化に貢献
  • 液漏れのない高い安全性、医療処置中に安定的に使用可能な長寿命性が求められる

【AIロボット・産業機械】

  • 動作の高速化によりサーボモータ等の回転機構の温度が上昇
  • 過酷環境で長時間複雑な使用に必要な電源を供給する必要
  • 耐熱超寿命かつ広範な放電温度範囲が求められる

【重要インフラ・防災】

  • 河川・火山監視、インフラセンサ等では、系統電源のない過酷環境で作動する必要
  • 特に遠隔地では通信方式やセンサの選定が電池容量に制約される
  • 高容量、過酷環境に耐え得る耐熱超寿命な電池が必要
  • 平時・災害時にも安定して電力を供給できるよう、高安全、長時間の充放電が可能な電池が必要

【宇宙】

  • 運搬コスト低減のため小型軽量・高エネルギー密度が必要
  • 交換・修理機会が限られるため、信頼性・安全性が重視される
  • 無重量・真空・高温・低音といった特殊環境への対応も必要

<所感>

家電では価格競争が激化し、日本製品の高品質はtoo muchと言われることもありました。

逆に、自動車では日本の高品質が確立した信頼性こそが、今の日本車の高いシェアの根底にあると思います。

自動車が高品質と価格競争力を両立できたのは、独自の生産方式と下請構造に支えられたサプライチェーン全体にわたって、5S、効率化、品質重視が浸透したからだと思います。

電池についても、価格競争力だけでなく、信頼性が重要になることは間違いありません。

自動車で確立したような、サポーティングインダストリーを、電池の分野でどのように築いていくか、が、この蓄電池・電源産業戦略の大きなポイントになると思います。